【レビュー】お金がどんどん増える「長期投資」で幸せになろう
長期投資を薦めは一貫だが、、
本書は、さわかみ投信の会長である澤上篤人氏が長期投資を薦めている本です。つみたてNISAが制度化され、若い世代が長期投資を行うことに適した環境が整いつつある中で、さわかみ投信は1999年から長期投資を前提とした投資信託として運用されています。アクティブ・ファンドの草分け的存在です。応援したい企業の株を割安なときに購入することを主張しており、これまでファンドを運用してきた経験などを記しています。序盤に日本経済の状況や成熟経済という用語を用いた独自の解説を行い、中盤から長期投資のメリットなどの解説に入り、終盤でさわかみファンドの紹介を行っています。
澤上氏は本書で、若い人が少額から投資を始めることを薦めており、様々な投資関係の書籍と同じように、長期投資と複利の効果の関係などについても解説しています。本書は、投資初心者に向けて書いていると思いますが、投資初心者は本書を読むべきではありません。理由としては、澤上氏のポジショントークが挙げられます。お金関係で、ポジショントークがそのまま書かれることは少なくありません。
本書もそのうちの一つだと考えます。特に、長期投資の解説以外の経済の解説が、ただ不安を煽っているだけで、内容も信憑性に乏しい箇所があり、経済学や投資について知らない人が読むとかえって有害になりかねません。澤上氏はマクロ経済学を知らないのではないか、と思う内容ですので、長期投資について学びたい場合、他の書籍を読むべきでしょう。成熟経済という用語を使って日本の経済停滞について論じている部分は、批判されても仕方がないと感じるほどです。
しかし、つみたてNISAについては、一定の評価をしつつ、恒久化や非課税額の増加を主張しており、この点は賛同する人も多いでしょう。それでも、つみたてNISAに採用されている投資信託について懸念している点は、ファンド運営の経験もあるでしょうが、ファンド関係者である氏の立場も反映している可能性を考えてしまいます。さわかみファンドは、総資産額も大きく、独立系ファンドでは有名です。独自の立場を取り続けてきましたが、近年の実績は、あまり評価されていません。本書の登場は、ファンドの新たな契約者を増やすことが目的ではないかと勘ぐってしまいます。
はじめに
老後資金は夫婦で2000万円必要―そう指摘した金融庁の「幻の報告書」は、いいきっかけをつくってくれた。担当の大臣が報告書を受け取らなかったとか、政府が「2000万円の数字がけしからん」と文句をつけたとか、たっぷりと話題をまいてくれたからだ。
ちょっとした騒ぎとなったことで、逆に国民の間で年金に対する問題意識が高まった。「やっぱり、そうか」と。結果的には、幻どころか最高の報告書となったと思う。
本書でゆっくりと、そして分かりやすく説明するが、「年金が将来どうなるこうなる」は、もういい。読者の皆さんだって、「年金だけに頼ってはいられない」と、うすうす感じていたんじゃないかな。
今さら年金不安を再確認したところで、何の足しにもならない。それよりも、自分の将来に向けて「今のうちから、何をどうしていったらいいのか」を考えることだよ。
そして、さっさと行動に移ろう。
どう行動するかって?何も難しいことはない。株式主体で本物の長期投資をするんだ。株式投資が難しいと感じる人は、卑近な例で申し訳ないが、ウチの「さわかみファンド」をずっと積み立て投資していくだけでも、結構いけてしまうよ。かなりの安心感も得られるだろう。
何しろ、3年もの間、投資運用で年5%を超す実績(積み立ての場合)を残しているのだ。これだけ日本経済が低迷・停滞し、普通預貯金の利子が年0.01%にもならない中で、年5%超の運用実績だよ。十分に説得力あると思わないか?
「20年といっても、過去の実績でしかない」「今後も、同じように成績を残していけるかどうかは、当てにならないのでは?」皆さん、そう言っては投資から逃げたがる。でも、もう待ったなしだよ。老後の暮らしを国任せにするのは限界だ。だから今、本格的な長期投資のすごさを皆さんに伝えたいと思い、この本を書くことにした。それも、かなり気合を入れて。
世間一般的な「投資」というと、バクチのようなイメージがある。機関投資家も含めて「投資は難しい」とか「リスクが大きい」とか、すぐ泣き事を並べたがる。「だったら、投資なんてやめておきなよ」と、われわれ長期投資家からすると一刀両断である。
そう言いたくなるほど、われわれの長期投資は腰が据わっている。難しいことは一切なしの、当たり前の当たり前をやっているだけだから、いつでも落ち着いていられる。それでいて、投資のリターンは少しずつ、しかし着実に積み上げていく。
投資をするのは、それなりのリターンを期待してのもの。投資のリターンを得るには、しっかりとお金に働いてもらうことだ。マーケットで「儲かった」「損した」のディーリング売買に、お金を追いやるのではない。大切なお金に、地に足の着いた働きをしてもらうのだ。
投資なんて、「安く買っておいて、高くなるのを待って売る」だけのこと。暴落相場を買いに行けば十分に安く買える。そこで買えなくて、一体いつ投資するのか。日本経済の長期低迷も、昨今の投資環境が難しいとやらも、われわれ長期投資家からすると、いくらでも対応策を打ち出せる。ひたひたと迫っている大きな混乱も、われわれの長期投資では想定内のこと。平然と乗り切れる。
ひたひたと迫っている大きな混乱とは?例えば、国債の暴落、財政破綻、悪性インフレ、ガラガラポン、今後色々起こり得る。このままズルズルと行ってしまうと、日本全体の「ゆでガエル化」は必至だ。それらも本書では説明していく。読者の皆さんに、なぜ今、主体的な財産づくりに踏み出さなくてはいけないか、いかに国任せが危険かを、自分事として理解してほしいからだ。
本書の後半では、「自分年金だとか財産づくりも、長期投資でならできてしまうよ」「こうすれば安心だよ」ということを、易しくまとめてみた。読んでもらえれば、皆さん相当に納得するはず。そして、長期投資したくなると思う。
でも、そこで満足してもらっては困る。本書はさらに、「お金の不安は軽々と乗り越えて、もっともっと充実した人生を送ろうよ」という域にまで踏み込んでいる。これは、すごく大事なことだよ。だって、お金、お金で人生を終わりたくないじゃない。
昔から「恒産なくして恒心なし」といわれているではないか。あのチャールズ・チャップリンも、「人生には勇気と想像力と、サムマネー(Somemoney)が欠かせない」という有名な言葉を残している。やっぱり、ある程度の資産はあってほしい。それでもって、堂々と誇りをもって生きていきたいものだ。「財産づくりでは、お金に働いてもらおう。それも、「世の中に良かれと思う方向で、お金に働いてもらう」という信念が大事となる。
ただ、ガツガツとお金を増やせばいいのではない。それだと、軽くて安っぽい財産づくりとなり、ちょっと風が吹くとどこかへ飛んでいってしまう。つまり、あっという間に消えてなくなっていく財産だ。「やはり、中身の伴った重みのある財産づくりをしていきたいものだ。より良い世の中をつくっていこうという方向で、お金にゆったりと働いてもらおうではないか。こう書くと、青くさく聞こえるかもしれない。でも、それが長期投資というものである。
さあ、一緒に長期投資の旅に出よう。そして、より良き社会と豊かな人生を実現していこう。
2019年9月さわかみ投信会長 澤上篤人
目次 – お金がどんどん増える「長期投資」で幸せになろう
はじめに
序章 お金の不安を吹き飛ばすために今すぐ動き出そう
長期投資があなたの人生を豊かにする
時間を味方に付けて、資産を大きく育てる
投資するお金がない? なら少しだけ無理してつくる
財産づくりの最初の一歩は「優雅なる節約」
序章のまとめ
第1章 今知っておくべき第一日本経済の「不都合な真実」
「老後資金2000万円問題」がもたらしたもの
何もかも国任せ、それがどれほど危険なことか
もう国に頼ってはいられない2つの理由
綱渡りの国家財政、いつまで持つのか こ
のままだと、日本はガラガラポンか!?
財政破綻と国債暴落の図式
悪性インフレで本物の価値が輝きだす
1章のまとめ
第2章 成熟経済を知ろう、そこから日本を変えよう
もう成熟経済になっている―その認識に欠けて低迷する日本
経済の成熟化はあるべき企業経営の姿も変える
日本独特の「右肩上がり三角形」
成熟経済の主役は生活者であり消費者である
金利を正常化し、消費者主導の経済へシフト
預貯金の1%を寄付に回すだけで日本経済は成長する!
成熟経済を活性化させるのは生活者である
2章のまとめ
第3章 「良い企業」を応援するゆったり長期投資で資産を増やそう
ようこそ、長期投資の世界へ!
長期投資を理解する5つのポイント
【その1】長期投資とは、お金に働いてもらうことである
【その2】投資の勉強などしなくていい!
【その3】ずっと応援していきたい会社を見つける
【その4】「安く買って高く売る」のリズムを大事に
【その5】投資は、「わがまま、マイペース」で
地味だが、生活者にとって大事な企業を長い目で応援する
3章のまとめ
第4章 コッコツ簡単!第一「投信積み立て」は資産づくりの強い味方
時間のエネルギーを活用して資産を増やそう
投信の積み立て投資で留意したい点
財産づくりは目標を立てることからスタート
複利の雪だるま効果は、時間をかけるほど効いてくる
積み立て投資でコツコツ財産づくり
ファイナンシャル・インディペンデンスを手に入れる!
経済的自立の先に広がる本当に豊かな人生
4章のまとめ
第5章「日本に長期投資文化を」第一さわかみファンド20年の歩み
夢を諦めないこと、情熱を持ち続けること
一般生活者の預貯金をターゲットに「本物の投信」を
直販でいく、長期投資を根付かせるにはそれが一番
「顧客にとっての最善」を実現するために挑戦を続ける
ITバブル期に重厚長大型の銘柄を買いまくる
底値を探り始めたら、長期投資は成り立たない
投資家顧客と運用者は二人三脚で栄冠を手にする
5章のまとめ
おわりに