【レビュー】知りたいことが全部わかる!不動産の教科書

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不動産と業界の基本と応用、そしてプラスα

本書は、不動産の教科書というタイトルですが、主に不動産の業界で働く方向けの本になっています。構成は、不動産取引に関する実践的な内容を項目ごとにまとめられています。そのため、不動産投資に興味を持ち、不動産の資産運用について調べたい、という方にはあまり向かないでしょう。

不動産は、多くの場合モノが実際に存在し、取引する際には大きな額のお金が動きます。この特徴は、他の金融資産や産業ではあまり見られません。そのため、不動産業界には独自の業務や法律が存在します。また、不動産は、人々の生活に密接に関わるものであり、お金も大きく関係してくるため、業務が多岐にわたり、責任も伴います。

本書では、そのような不動産業界において、必要となる知識を分かりやすく解説しています。序盤では、宅地建物取引業者の基本的な内容の解説から始まり、徐々に不動産調査の基本的な内容に進んでいきます。宅地建物取引士を取得している方なら、既に学んだ内容が所々に含まれているため、読み飛ばしたり、忘れていた箇所の復習をすることができるでしょう。

不動産調査については、実際に不動産業者の社員として働く場合、知っておくべきことが解説されており、実務経験が少ない方には役立つ項目もあると思います。例えば、現地で対象の物件を調査する場合、法律や規約の確認だけでなく、利用するかもしれない顧客の目線に立って調査を行う必要性とその方法を具体的に説明しています。

さらに、法務局や役所での手続きや相談・質問の仕方についても言及されているため、参考となる点があるでしょう。後半では、資金計画や契約の手続きの進め方に触れています。契約を進める際の注意点や住宅ローンなど詳しく解説されているため、知っておくべき知識を学べるでしょう。全体的に実務の幅広い分野がまとめられており、まさに教科書のようです。内容が豊富で、不動産業界に関心のある方にはおすすめできる一冊だと思います。

池田 浩一 (著)
ソーテック社、出典:出版社HP

はじめに

あなたは、どのような気持ちで、この本を手にしてくれたのでしょうか。
不動産業界を目指している人、不動産業界に身を置いて数年の人であれば、「不動産の基礎からしっかりと学びたい」、あるいは「あまり時間をかけずに専門知識を学び、即実践で役立てたい」、なかには「高額な不動産を次々に取引してお金儲けをしたい」という素直な人もいるでしょう。

結論からいってしまえば、すべて大丈夫です。大切なのははじめる「動機」ではなく、実際に「行動」を起こし、確実に「成果」をあげることです。本書の目標はひとつです。「不動産実務、複雑な専門知識を効率的に学び、即、実践で通用する営業力を身につける」これだけです。

そして、基礎から学びたい不動産業界1年生、営業力に磨きをかけたい2年生、そして建設業、金融業など不動産と関わる業界にお勤めの人が常に傍らに置き、どんな場面で不動産と関わるときにも、「次の一手」を打つためのヒントを導き出す「不動産の指南書」でありたいというのが、本書の目指す究極の目標です。

今後の不動産業界を担う若者たちを応援する本書には、2つの特徴があります。
1.実際の不動産実務の流れに沿って段階的に専門知識を学べる実践での活かし方がわからないまま知識を丸覚えするのではなく、「今」本書で学んだ知識を、「次」の実践で活かすための「方法」を確実に学ぶことができます。
2.専門知識・専門用語は、図版、実例を多用しわかりやすく説明する実践で必ず必要となる知識を絞り込み、図版、実例を多用し説明することで、実際に経験したことのない内容も、体系的に理解できるよう工夫しました。

本書を手にとり、実際に行動を起こしたあなたが不動産に関わり、不動産とともに生きることの新たな「喜び」と「希望」を見出す一助となれたら、筆者としてこんなにうれしいことはありません。池田浩

目次 – CONTENTS

第1章不動産営業の基本を学ぼう
01宅地建物取引業者の基本業務
●宅建業者の「売り」は総合プロデュースカ
02宅建業免許取得と保証金供託
●宅地建物取引業(宅建業)ってどんな仕事?
●「お家の何でも屋さん」が宅建業をするための条件
03宅地建物取引士は不動産取引の専門家.
●宅地建物取引士に与えられた3つの「特権」
04不動産流通のしくみを学ぼう
●不動産流通のしくみを学び、確実な情報収集を
05媒介契約には3種類ある。
●媒介契約は宅建業者と依頼者の信頼関係の証
06宅建業者と報酬規定(仲介手数料)
●宅建業者の使命は報酬以上のサービス提供

第2章不動産調査の基本[現地編]
01「売主しか知らない事情」を聞き出そう
●すべての調査は売主へのヒアリングからはじまる
02売主に重要書類を用意してもらう
●まずは売主と協力し、重要書類を整理しよう
03アクセスは必ず「公共交通機関」を利用しよう
●公共交通機関を利用し、生活環境を体感しよう
04トライアングル調査を実践しよう
●現地調査は買主目線で見れば決定打となる新発見も
05常備現地調査の「三種の神器」
●調査のときは三種の神器と媒介契約書を常備
06周辺の生活施設のチェックは念入りに
●自分で周辺環境、生活施設をチェックしよう
07売却物件、成約事例地は必ず確認しよう
●レインズは情報の宝庫、現地調査にフル活用
08現地調査の確認ポイント(土地・一戸建)
●道路幅員、敷地形状(間口、奥行き)の測量
●ライフラインの確認(メーター・側溝・枡)
●境界確認、越境確認、ブロック塀など構築物の確認
●屋根、外壁などの確認(クラック、塗装剥れ、破損)
●室内の確認(水周り設備・雨漏り痕・木部腐食)
●採光、通風、臭気、騒音の確認
●嫌悪施設の有無(火葬場・墓地・下水処理場・廃棄物処理場)
09現地調査の確認ポイント(マンション)
●管理人さんにヒアリング調査
●セキュリティシステムの確認(オートロック・防犯カメラ)
●掲示板・管理人や清掃スタッフの業務態度
●エントランス、駐車場、駐輪場、集合ポスト、ゴミ集積所
●エレベータ・非常階段・消防用設備
●外壁・廊下・階段・鉄部
●室内の確認(水回り設備、雨漏り痕、木部腐食)
●採光・通風・臭気・騒音の確認
10管理組合調査の重要ポイント(マンション)
●管理費・修繕積立金
●修繕積立金の累計額管理費・修繕積立金の改定予定
●管理費・修繕積立金の滞納額管理規約と使用細則
●駐車場使用権
●専有部分の用途制限
●ペット飼育の制限
●フローリング規制
●大規模修繕工事実施計画
●大規模修繕工事実施履歴
●石綿使用調査結果の有無
●耐震診断結果の有無
●管理組合の借り入れ金の有無
●管理会社の委託形態と管理事務所の業務形態

第3章不動産調査の基本[法務局編]
01法務局では何を調査するのか?
●法務局の調査結果をもとに現況を正しく理解する
02登記簿謄本の種類と構成
●登記簿謄本は使用目的と調査対象に応じ使い分け
03表題部の読み方
●調査ポイントは現況把握と相違の原因究明
04甲区欄の読み方
●登記名義人が現在の所有者とはかぎらない
05乙区欄の読み方
●所有者でも不動産を自由に売却できない理由
06共同担保目録の読み方..
●共同担保目録から見えない「糸」が見えてくる
07公図、地積測量図、建物図面・各階平面図の読み方
●現地調査の結果と取得図面とを徹底照合する
08区分所有登記の基本と実務
●敷地権登記では、建物の権利が土地持分にもおよぶ

第4章不動産調査の基本[役所編]
01市区町村役場で何を調査するのか?
●調査結果から建築可能な建物の条件を判断する
02市街化区域と市街化調整区域
●市街化調整区域でも住宅建築は可能
03用途地域の種類と法規制.
●現在の用途地域、過去の変更履歴を調査しよう
04防火地域と準防火地域
●地域区分は住民の「安全面」への配慮が重要
05建ペイ率と容積率
●金融機関も注目!建ペイ率・容積率オーバー
06建築物の「高さ」制限
●建築物高さ制限の目的は環境維持と日照確保
●高度地区
●絶対高さ制限
●日影規制
07斜線制限
●斜線制限とは勾配面による建築物の高さ制限
●道路斜線制限
●隣地斜線制限
●北側斜線制限
08敷地面積の最低限度、
●敷地面積1m3の差が評価の明暗を分ける
09都市計画道路の確認法.
●都市計画道路の恩恵は工事完成、供用開始から
10開発許可.
●近隣の開発予定と調査対象地への影響を調査
11土地区画整理事業.
●土地区画整理事業では、清算金の確認が最重要
12土壌汚染対策法指定区域..
●危険物取扱工場、ガソリンスタンド跡は要注意
13埋蔵文化財包蔵地…
●出てきたら大変!埋蔵文化財
14造成宅地防災区域、津波災害警戒区域、土砂災害警戒区域、
●造成宅地防災区域
●津波災害警戒区域、
●土砂災害警戒区域
15道路の種類と接道状況.
●不動産の本当の価値は道路づけで決まる
●道路とは?
16ライフラインの調べ方。
●ライフライン調査の目的は現況把握と改善提案
●上水道の調査を行う
●下水道の調査を行う
●ガス供給施設の調査を行う
●電気供給施設の調査を行う建築計画概要書と台帳記載事項証明書
●書類取得の目的は建築確認申請時と現況の把握
●建築計画概要書●台帳記載事項証明書

池田 浩一 (著)
ソーテック社、出典:出版社HP

 

第5章「不動産査定」に挑戦しよう
01不動産の4つの「価格」を学ぼう
●宅建業者の役割は「勝負できる価格」の見極め
1固定資產稅評価額
2路線価
3公示価格
4実勢価格
02不動産の3つの「評価法」を学ぼう
●個別要素と個別事情を考慮した適正価格を導き出す
1原価法
2取引事例比較法
収益還元法
03最重要確認事項ベスト3
●実勢価格は個別事情による補正が決め手となる
04「不動産査定」は宅建業者の腕の見せ所
●法定耐用年数だけにとらわれない。
●成約価格だけでなく販売中の動向、販売期間に注目
●坪単価ではなく地域全体を捉える感覚が大切
●地域同業者への聞き込み調査の重要性
05「面大減価」も地形と用途次第…
●土地の価値は「量」ではなく「質」で決まる

第6章「資金計画」を本格的に学ぼう
01諸費用を学ぼう売主編
●諸費用を確定し、売却理由に応じた住み替え提案を
02諸費用を学ぼう買主編
●買主費用は資金計画と方向性から確定する
03諸費用の支払い時期を学ぼう…
●必要な費用と必要な時期が当事者の1番の関心事
04宅建業者の住宅ローンとの関わり方
●融資づけで不動産業者の「力」が決まる
●不動産業者により融資条件が違うのはなぜ?
●お客様の要望は新規開拓のチャンス
05住宅ローンにこだわりローン担当者にこだわる
●住宅ローンにもとことん「こだわり」を
●融資結果はローン担当者次第である
06金融機関の選び方
●銀行はお金を貸したい!いい人、いい家に
07買主のイメージする「購入予算」を確認.
●資金計画のスタートは買主希望の購入予算から
08「月々返済額」から「購入予算」を考える
●買主の立場で「希望する購入予算」を考える
09借入可能額から「購入予算」を考える
●金融機関の立場で「実現可能な購入予算」を検討
10金融機関の担保評価と実勢価格
●金融機関は担保掛目で安全圏を確保する
●金融機関が担保と認めない物件
11収入合算の3つのパターンを学ぼう
●夫婦共働き世帯に最適!もちろん親子でも可能
a連帯保証のケース
b連帯債務のケース
cペアローンのケース
12金融機関が重視する個人信用情報とは
●自己申告が鉄則!金融機関に隠しごとは通用しない
13住宅ローンの基礎の基礎…
●金利の種類(変動金利・固定金利)
●返済方法(元利均等返済・元金均等返済)
●毎月返済・ボーナス返済
14一歩踏み込んだローン知識を身につけよう
●繰り上げ返済(期間短縮型・返済額軽減型)
●つなぎ融資と分割融資

第7章 不動産取引の「実践知識」を身につけよう
01スタートは買付証明書と売渡証明書から.
●不動産購入の第一歩は買付証明書からはじまる
02申込証拠金を受け取る場合の注意点
●申込証拠金は良くも悪くも使い方次第
03既存住宅状況調査(インスペクション)
●既存住宅状況調査の説明義務化スタート
04重要事項説明を行う…
●重要事項説明の前提は「理解してもらう」こと
05売買契約を締結する
●売買契約書では特約条項に細心の注意が必要
06手付金と手付解除の定め方
●手付金と解除期日は偏りのない定め方が鉄則
07違約金と違約解除の定め方
●違約解除を考慮した手付金と解除期日の設定を
08融資利用特約
●融資利用特約の目的は融資非承認時の買主保護
09共有名義物件の注意点
●共有名義案件は「やりすぎてちょうど」の精神で
10代理人による契約の注意点
●代理人契約は委任状だけで安心してはいけない
11成年後見人との契約の注意点
●居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要
12現状有姿を学ぼう.
●「現状有姿」は仲介業者の「逃げ道」ではない
13瑕疵担保責任を学ぼう
●瑕疵担保責任は「期間」と「範囲」の定め方が重要
14危険負担を学ぼう.
●あり得ないはあり得ない!他人事ですまされない
15クーリングオフを学ぼう.
●買受けの意思表示を受けた場所が最重要
16停止条件と解除条件
●契約の「有効性」は「条件」の定め方次第
17更地渡しの盲点
●「掘ってみないとわからない」は通用しない
18内装渡しの盲点
●内装済物件に勝る本物のサービスを提供しよう。
19心理的瑕疵の説明1
●心理的瑕疵の基本は買主の立場で考えること
20心理的瑕疵の説明2
●心理的瑕疵は売主の立場にも配慮した対応が大切
21任意売却の注意点
●任意売却は「新たな生活への節目」である
22相続物件売買の注意点
●相続物件売買は「慣れ」が通用しない世界である

第8章「融資実行」「登記手続き」「決済」を学ぼう
01金銭消費貸借契約と決済までの準備
●金銭消費貸借契約、完済依頼、決済日までは計画性が重要
02決済当日の手続き
●決済という名の舞台では関係者全員が主役

第9章物件の引き渡しとアフターフォロー
01お客様と一緒に不動産の総点検を行う
●物件状況報告書をもとに不動産を総点検しよう
02リフォーム提案で差をつけよう
●頼れる内装業者との関係は宅建業者の能力のひとつ

第10章不動産取引と「税金」知識
01不動産を「買う」ときに必要となる税金
●購入時の税金は買主資金計画の必須項目
02不動産の「売却時」と「所有時」に必要となる税金
●譲渡所得時の税金は所有期間によって約2倍
03プロとしてこれだけは知っておきたい税金知識
●住宅ローン控除は10年間で最大500万円控除

付録
●「登記事項証明書」「登記簿謄本・抄本」交付請求書サンプル
●「地図」「地積測量図等」の「証明書」「閲覧」請求書サンプル
●住宅ローン借入申込書サンプル

池田 浩一 (著)
ソーテック社、出典:出版社HP