毎月1万円で2000万円つくる! つみたて投資・仕組み術
つみたて投資は現実的か?
近頃、若年層を中心に投資に対する意識が変わっています。かつての投資に対するイメージは、ギャンブルと同じで大きな損をするかもしれない、という認識が強かったり、投資はお金持ちがやることで、自分には関係ない、と考えられていたこともありました。この変化の背景には様々な理由があると考えられます。例えば、若い世代はバブル崩壊の経験をしていないために、投資への抵抗感が上の世代よりも低い、といったものや情報化社会になったことで、投資に関する情報に触れられるようになったことも理由に挙げられます。さらに、金融庁が中心となり、貯蓄から投資への転換を国内で推し進める向きなども重なり、現在のようになっていると考えられます。
そのような状況において、投資の基本であり、王道ともいえる投資手法が投資初心者に推奨される機会が増えています。それが、本書で紹介している「つみたて投資」です。つみたて投資は、金融商品を定額で購入し続ける投資手法で、ドル・コスト平均法とも呼ばれるものです。本書では、そのつみたて投資について、基本的な考え方からつみたて投資のメリット、投資信託に関する知識やつみたて以外の投資の種類など、投資を始める前に知っておきたい内容が解説されています。
つみたて投資がなぜ、ここまで注目されているのかというと、リスクを抑えながら、一定の額の資産形成が行えるからです。タイトルにある毎月1万円で2000万円は、現在の低金利化では、貯金で実現することは極めて難しいです。しかし、つみたて投資であれば、20代から投資を始めれば実現可能な数字になります。20代以降の方であっても、積み立てる金額を増やすことで、2000万円の資産を築くことができます。当然、何歳の時にいくら必要か、は人によって大きく異なります。本書で掲載されているのは、大まかな目安のみですが、それでもつみたて投資の有効性が実感できると思います。本書のつみたて投資のロードマップを見れば、つみたて投資によって、老後資金の不安を解消することができる可能性があることがわかります。
つみたて投資のメリットは他にもあり、手間がかからない、手数料が低い投資信託を選ぶことで、手数料が原因で利益が減るリスクを減らせる、つみたてNISAを活用すれば、利益が非課税にできる、などが挙げられます。著者は、投資信託のつみたてを勧めていますが、他の投資手法を否定しているわけではありません。条件や環境によって、どの投資手法を採用するのかが変わってくることも認めています。むしろ、頑なにつみたて投資以外は認めないことは可能性の排除にもつながるとして、注意を促しています。本書は、投資について詳しくない方向けの本であり、つみたて投資を早く始めることを勧めてはいますが、本書を単なるつみたて投資の入り口ではなく、より広い範囲の投資の入り口にする意識が表れていると言えるでしょう。
本書は、全体的にわかりやすい文章で、ターゲットの投資初心者の方でもすらすら読めます。つみたて投資に関する内容がうまくまとめられています。投資を始める前に知っておきたい基礎的な情報もあります。具体的な銘柄のおすすめなどはなく、基本的な考え方をしっかり説明するスタイルです。投資の入り口として良い本だと思います。
本書は第1章から第7章まであります。
第1章は、投資をしないリスクがテーマで、インフレによる現金の価値が下がるリスクの説明や証券会社の手数料の低下の紹介などを行っています。
第2章は、投資を始める前に注意しておきたいことや知っておおくべき項目を紹介しています。
第3章は、つみたて投資のメリットとデメリットについて、第4章は、投資信託の基本的な内容について解説しています。
第5章は、退職後の話をテーマに、出口戦略の考え方を説明しています。
第6章は、つみたて投資以外の投資の紹介を行っており、最後の第7章では、投資で得られるメリットや人生における投資の位置づけの解説を行っています。
はじめに
数ある投資関連の書籍から、本書を手に取っていただきありがとうございます。
皆さんはきっと、自ら将来の資産形成をすべく「つみたて投資」を学ぼうと考えていることでしょう。
日本では投資というと「危険」や「ギャンブル」といったネガティブな印象を持たれることが多かったのですが、ここ数年で少しずつ日本人の投資に対する考え方が変わってきているように思います。
その1つのきっかけになったのが、「老後2000万円問題」ではないでしょうか。
大多数の人が定年退職後は年金だけで生活できると考えていたにもかかわらず、実際にはそれだと2000万円足りなくなるという報告書は大きな衝撃を与えました。
この報告書が世に出たのは2019年のことですが、2020年に民間の保険会社がセカンドライフについてアンケート調査を行ったところ、老後生活を始める前に貯めておきたい金額は平均で3033万円という結果になりました。このことがニュースとして流れると、ネット上では老後生活を悲観するコメントが多く見られました。老後2000万円問題が世間を騒がしてから1年足らずで必要金額が1000万円も増加したように見えたわけですから、それも仕方のないことでしょう。
しかし、本書の中でも詳しく説明しますが、老後2000万円問題が世に出た時点で私は「人によっては2000万円どころではなく、4000万円前後の金額が必要となる人もいる」と言ってきました。それは個人的な感想というよりは、国や公的機関が発表しているデータから算出した意見なので、大きく外れることはないと考えます。
……本文を読む前から、暗い気持ちにさせてしまったかもしれません。
とはいえ、私は何も不安を煽りたいわけではありません。闇雲に将来を悲観するのではなく、しっかりとデータを確認したうえで、いつまでにどれくらいのお金が必要か、そのためには何をすればいいかを知り、しっかりと準備をしましょうと強調したいのです。
準備といっても、投資は難しそうだし、騙されたりしないか?と不安に思うかもしれませんが、そこは安心してください。0年前、20年前なら何もわからず金融機関の営業員に言われるがまま投資をするということもあったかと思いますが、現在はネット環境さえあれば誰かに誘導されることもなく、すべて自分の判断だけで完結して取引できます。投資の際にかかる手数料もこの10年の間で劇的に低下し、また、国も投資による資産形成を後押しすべく、いくつもの税制優遇制度を用意してくれています。
これだけ環境が整えば、あとはどのように投資をすればいいのかを知ればいいだけです。そこで、本書を読んで投資の王道と呼ばれる「つみたて投資」をしっかりと学び、実践をして、将来に備えていただければ著者としてはうれしい限りです。
どうしても専門用語や難しい言葉・数式が使われがちな投資の世界ですが、極力そのようなことがないように注意し、言葉だけでは理解しにくい部分はグラフや表を用意しました。肩の力を抜いて、少しずつ読み進めてもらえればと思います。
2020年 12月
森永 康平
CONTENTS
毎月1万円で2000万円つくる! つみたて投資・仕組み術
はじめに
第1章 高まり続ける「投資をしないリスク」
1 他国とこれだけ差がついた金融資産
2 現金で持っておくのが一番かしこい選択?
3 デフレに強い現金とインフレリスク
4 ネット証券のおかげで、手数料はものすごく下がった
5 「株価は上がり続ける」と信じられる市場に投資しよう
Column なぜ米国株はこんなに強いの?
第2章 投資を始める前に絶対知っておくべきこと
6 将来のことは誰にもわからない
7 卵を1つのカゴに盛ってはいけない
8 目先に振り回されない「長期的な視点」を持とう
9 そもそも自分は、なぜ資産運用をするのか?
10 専門家の勝率は意外と低い
11 一次情報にあたる習慣をつけよう
12 長く続けるメリットと複利の効果
13 休むも相場
14 投資が「人生の中心」になってはいけない
Column 毎月いくらから始めたらいい?
第3章 これだけある!「つみたて投資」のメリット
15 「老後2000万円問題」が突きつけた現実
16 感情をおさえて機械的に投資をする重要性
17 世界の成長に乗り、優秀な経営者に稼いでもらおう
18 合法的に税金の支払いを免れよう
19 つみたて投資で2000万円をつくるロードマップ
20 つみたて投資のデメリット
Column 手続きの方法、まずはここから!
第4章 「つみたて投資」の相棒——投資信託を学ぼう
21 そもそも「投資信託」って何?
22 投資信託のメリットと、株式投資との違い
23 投資信託の情報はどうやって得たらいい?
24 投資信託の手数料とノーロード投信
25 投資信託の種類を理解しよう
26 「放置すること」が投資の王道
27 下落局面こそつみたて投資のチャンス
Column 実際、何に投資したらいい?
第5章 退職後に備えて知っておくべきこと
28 今後求められるのは「運用しながら取り崩す」こと
29 取り崩す際は、「円」ではなく「%」で考えよう
30 「ターゲットイヤーファンド」と「ターゲットインカムファンド」
31 元気なうちにやっておくべき手続き
32 投資は老後の楽しみにもなる
Column 今すぐ「もしも」に備えよう
第6章 「つみたて」以外にもある。投資の方法
33 「2割」は攻める!コア・サテライト戦略
34 インデックス運用の強化版「エンハンスト・インデックス」
35 人気が高い「ブルベア」と「インバース」
36 「つみたて」では手を出してはいけないレバレッジ投資
37 お金や投資の世界に「絶対」はない
Column 株式投資への配分を考える|
第7章 「投資の果実」をすべて食べ尽くそう
38 「果実」は運用益だけではない
39 若い時は、投資よりも収入を上げる努力が大事
40 SNSでの情報収集と、発信することの面白さ
41 「経営者の視点」を身につけよう
Column 情報はどこから入手したらいい?
おわりに
カバーデザイン 西垂水敦・松山千尋(krran)
カバーイラスト KAZMOIS
本文デザイン 石山沙蘭
組版・編集協力 小中強志