【レビュー】MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法

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本書は、著者がこれまで証券業界で働いてきた経験から得た、米国式の株式投資のノウハウをまとめた本です。しかしながら、日本株でも応用できるものも多いとしています。著者の広瀬氏はMarket Hackという投資家向けのウェブサイトを運営しております。

投資を既に行っている方の中で、米国株に関心があるものの、これまで米国株に投資を行ったことがない、という方がいらっしゃるかもしれません。本書はそのような方向けだと思います。投資の初心者には向かない本であると思います。また、本書の情報がやや古いため、その点は考慮する必要があるでしょう。

タイトルにもあるように、本書のテーマは技法の解説です。そのため、投資の判断基準がかなり明確です。例えば、営業キャッシュフローの数字について、着実に増えていること、純利益の数字よりも大きいこと、というように具体的でわかりやすいです。

また、投資を行う際に取るべき姿勢などについても書かれています。株式投資はリスクがつきものです。これまで、先人たちは株式投資のリスクを如何にして抑えながら、高いリターンを得るか、という課題に挑戦してきました。

その答えとして、バリュー投資とグロース投資という概念が生まれました。この2つの手法は、現在でも論争がありますが、その人の性格や好みによる、という考え方が一般的になっていると思います。著者は、このバリュー投資とグロース投資の背景や特徴を解説し、どのような戦略をとってそれぞれの手法を取るべきかを指摘しています。

その他にもマクロ経済を把握することの重要性やデイトレードの解説もあり、読み物としておもしろいと感じます。確かに、日本株でも通用しそうな内容を含んでいます。しかし、本書は、著者の経験から書かれており、意見も一般的な内容ばかりでなく、独自の数値の基準なども含んでいます。そのため、本書で示されている判断基準を確認することは必要でしょう。ただ、個人投資家の米国株の入門書としてわかりやすい書籍だと思います。

広瀬 隆雄 (著)
東洋経済新報社 (2013/11/29)、出典:出版社HP

まえがき

私は1986年に証券界に入り、1988年からニューヨークとサンフランシスコの投資銀行で、
アメリカ株を中心に世界の株式のセールスや引き受けの仕事に携わりました。その関係で、米国式の投資手法に接する機会がありました。
もちろん米国式の手法の全てがよいというわけではないと思います。ただ自分自身、彼らの アプローチに目からが落ちるような経験をしたことも多く、本書を通じてそれらを読者の皆さんに紹介できればよいなという気持ちからこの本を書きました。

したがって、ここで論じられている投資対象は海外の企業や経済に関することが多いです。 でも考え方としては、日本株に投資する場合にも使えるものが多いと思います。現在、私はMarket Hackという投資家向けのウェブサイトを運営しています。Market HackのHackは「ハッカー」から来ています。これは「マニア」のような意味だと思って下さい。Market Hackは月間で100万ページビューを超えるアクセスがあります。

さて、具体的に本書では:
①成功する投資を行うため投資家が守るべき「鉄の掟」
②ポスト団塊ジュニア層が投資を始める際、心にとめておくべきこと(NISA攻略法)
③デイトレーダーになりたい人はどうやって始めればよいか
④長期投資のコツ(ウィリアム・オニールの投資法、ETFの活用法など)
⑤2014年の投資機会
などについて説明します。皆さんが投資をされる際のヒントやノウハウを本書から得ていただければ、これほど嬉しいことはありません。

Market Hack流世界一わかりやすい米国式投資の技法―目次

まえがき

序章 1990年代のシリコンバレーと
Market Hack流投資術が編み出されるまで
1. 「本当に役に立つな」と私が感じたノウハウを惜しみなく
2. 頭がクラクラして、吐き気を催すような体験
3. 熱狂の最中では、優良会社を見分けるのは至難の業
4. グロース投資という手法に接する
5. 2020年夏季オリンピックが日本株に与える影響について

chapter 1
Market Hack流投資術
1. 営業キャッシュフローのよい会社を買え
*COLUMN ヘッジファンド・マネージャーの財務分析
2. 保有銘柄の四半期決算のチェックを怠るな
3. 業績・株価の動きが荒々しい銘柄と、おとなしい銘柄をうまく使い分けろ
4. 分散投資を心がけろ
5. 投資スタイルをきちんと使い分ける
6. 長期投資と短期投資のルールを守れ
7. マクロ経済がわかれば、投資家としての洗練度が格段に上がる
8. 市場のセンチメントを軽視する奴は儲けの効率が悪い
9. 安全の初代をもて
10. 謙虚であれ(投資の勉強に終わりはない)

chapter 2
ポスト団塊ジュニア世代のネストエッグ戦略
1. ネストエッグ戦略を考える
2. 賢いポートフォリオの組み方
3. NISA(ニーサ)の攻略法

chapter 3
デイトレーダーへの道
1. デイトレーダーになるために気をつけること
2. CFD取引で勝つために
3. 先物取引は究極の金融商品
4. 先物取引の歴史
5. 「投資」と「投機」を区別して善悪を論じるのはおかしい
6. 現物決済の銘柄に見られる特徴
7. 3種類のトレーダートレーダーとしての成長過程
8. トレード日誌に書き込む事柄
9. トレード・プランの立て方
10. ちょっとだけコモディティ取引について
11. 実践! 株価指数先物の取引のしかた

chapter 4
長期投資のコツ
1. 長期投資のメリットを享受するために
2. ウィリアム・オニールについて
3. ある国の株式市場全体に投資する際の心得
4. ETFについて

chapter 5
2014年の投資機会
1. 世界を巨視的に見れば
2. 今、中国に何が起きているか
3. 欧州経済の復活
4. アメリカに投資する際の目のつけどころ
5. 日本に投資する際の目のつけどころ
6. ドイツに投資する際の目のつけどころ
7. ブラジルに投資する際の目のつけどころ
8. ロシアに投資する際の目のつけどころ
9.インドに投資する際の目のつけどころ
10. 中国に投資する際の目のつけどころ
11. ベトナムに投資する際の目のつけどころ
12. ミャンマーに投資する際の目のつけどころ

広瀬 隆雄 (著)
東洋経済新報社 (2013/11/29)、出典:出版社HP