【レビュー】10歳から知っておきたいお金の心得

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お金ってこう考えよう!

日本ではこれまで、お金の教育が学校などで行われることがほとんどありませんでした。しかし、近年徐々に、子供の早い段階からそのような教育を行おうとする向きが強まっています。本書は、子供でもわかるようにイラストを用いて、お金のしくみの大まかな内容を説明しています。

構成としては、章立てで、物価、将来のお金、銀行、投資、税金や社会保障をテーマにしています。このような子供向けのお金の教育に関する絵本は、最近徐々に増えており、日本の金融リテラシー向上へ向けた取り組みとしては、注目すべきことでしょう。その一方で、お金は内容が多岐にわたり、子供たちに教育するには難しい一面もあるでしょう。

本書でも、工夫や試行錯誤の跡が見受けられます。言葉選びの仕方や説明の論理を組み立てる難しさが現れていると感じます。最初の説明は物の価格の決まり方から入っていますが、説明は易しい一方で、そもそもお金とは何か?という、基本的な疑問が解決しにくいのではないかと感じます。また、所々説明不足だと感じる箇所が見受けられます。わかりやすくするためにある程度内容を絞る必要があるでしょうが、説明不足に感じる部分や誤解を招く表現もあります。

事例を挙げるとすれば、「リスク」という言葉が使われている箇所ですが、わからないこともリスクである旨が書かれていますが、ここまで書くのであれば、危険性を表す一般的な意味の「リスク」と投資における不確実性の意味の「リスク」の違いまで踏み込んでもよいのではないでしょうか。構成の視点でも、読者が意味の混同をしやすいものであるようにも思えます。このあたりは10歳というのを割り切って、ご家族が説明するのが良いのかもしれません。

八木 陽子 (監修)
出版社: えほんの杜 (2019/11/22)、出典:出版社HP

はじめに ~おうちの方へ~

日本はお金の教育が遅れていると言われています。

ですが、お金の教育とはなんでしょうか?

簡単な「稼ぎ方」でしょうか?
お金で「損をしない」方法でしょうか?
自分だけが利益を得る「お金の増やし方」でしょうか?

世の中を生き抜くためには、そうしたお金の知識が必要なときもあります。

ですが、そんなことばかりを考えて生きている大人は、本当に幸せなのでしょうか?
そんなことばかりを考えている大人を、カッコイイと思えるでしょうか?
そんなことばかりを考えている大人から、子どもたちがお金の教育を受けるとしたら、どう思うでしょうか?

この本で本当に伝えたいこと。
それは、お金は社会の血液。
だからこそ、社会をよくするための「お金」を考えてほしいです。

自分の好きな仕事でお金を稼ぐことの喜び。
自分の好きな仕事を通して、世の中に貢献できることの喜び。
自分が好きな会社を応援する目的で、投資をすることの喜び。

お金は稼げばいい、増やせばいい、という訳ではありません。

大切なのは稼ぎ方と、増やし方と、使い方です。

そして、稼ぎ方や使い方に、社会をよくするための「思い」や、人を幸せにする「願い」が込められていれば、お金の話をすることは、カッコイイことになるでしょう。

この本が目指すのは「キレイごと」ではありません。
そこには、ある意味での「お金の真実」があると信じています。

キッズ・マネー・ステーション代表
八木陽子

もくじ

はじめに ~おうちの方へ〜

お金について教えてくれる先生たちを紹介するよ!

第1章 物の価格はどうやって決まるの?
その品物を「欲しいと思う人」と、その品物を「売りたいと思う人」のバランスが大切だよ!欲しい人が多いと、同じ品物でも価格は上がるよ!
円の価値は毎日変動しているよ!
「円安」「円高」という言葉を聞いたことがあるよね。実は「円安」「円高」が価格に関係することもあるんだ!
「景気がいい」「景気が悪い」という言葉があるけど、景気がいいと物の価格も上がるの?
インフレは物の価格が上がること。デフレは物の価格が下がること。どっちがいいの?
実例 ハイパーインフレをおこした世界の国々
景気は常に変動している。そして世界経済も毎年上昇している。この意味を考えてみよう!
実例 時代によってこんなに違うビックリ〜!モノの価格!
たとえばチョコレートをひと箱作るのにいくらのお金が必要かな?
コラム 古今東西「お金」についての名言集! その①

第2章 未来のお金はどうなるの?
現金がなくても買い物ができる!キャッシュレスには3つの支払いパターンがあるんだよ。
キャッシュレスは「カード」「QR、バーコード」「ICチップ」、
さまざまな技術を使って、つくられているんだね。
キャッシュレス決済は楽チン!でもそのウラにはキケンもたくさん潜んでいるんだ。
インターネットを通じて世界中の人を助けられる!
暗号資産(仮想通貨)ってなんだろう?
暗号資産ができた歴史
昔のビックリお金 世界編
コラム 古今東西「お金」についての名言集!その②

第3章 銀行って何をしているところ?
そもそも銀行って、何をしているところ?預けているだけでお金が増えるって本当?
銀行の仕組み
「預金」「貸出」「為替」が銀行の3大業務。
いろいろな人たちのお金で経済をまわしているんだね。
お金を発行できる唯一の銀行「中央銀行」とも呼ばれ、金利を調整しているんだよ。
コラム 古今東西「お金」についての名言集!その③

第4章 投資でお金は増やせるの?
お金を「育てる」ことを「投資」というよ。
投資は「会社を応援すること」だよ。
投資のひとつ「株」は「株式会社」が発行しているものなんだ。
調べてみよう!ボクや私ができる投資
昔話『わらしべ長者』が長者になることができた「ワケ」!
お金が減って損をするのは嫌!
損をしない方法はある?
コラム 古今東西「お金」についての名言集!その④

第5章 税金や社会保障って何?
税金はくらしやすい社会にするために使われる、大切なお金だよ!
ボクたちが住んでいる街は、税金のおかげで成立しているんだ!
税金には種類があるよ!
大切な税金の使い方は選挙を通して、国民みんなで決めているよ!
ボクたち子どもも税金を払っているの?
世界のビックリ税金大集合!
風邪をひいたときに病院に行くとボクとママでは病院に支払う金額がちがうんだね。
年金は今まで日本を支えてくれた、おじいちゃん、おばあちゃんを今度は若者たちが支えるための制度だよ!

特別ページ ボクたちのおこづかい大戦!
コラム 古今東西「お金」についての名言集!スペシャル
お金の先生たちから やがて大人になるキミたちへ向けたメッセージ!

おわりに〜子どもたちへ〜
お金について教えてくれる先生たちを紹介するよ!
めえめえ先生
八木陽子
八木キッズ・マネー・ステーション代表。オーストラリアでファイナンシャルリテラシーの授業を視察した経験から、「生きていくのに大切なお金の教育を日本に!」と、日々奮闘して早10年以上。「お金と人生」の奥の深さにハマってます。

あおはる先生
柴田千春
メーカー勤務のリケジョから一転、ファイナンシャルプランナーに。なかなか教わることはないけれど、お金や社会の知識はだれでも必要になるということを強く感じ、子どもたちへの金銭教育に関わるようになりました。

アンドゥー先生
安藤真寿
特別支援教育支援員からファイナンシャルプランナーに。小学校や中学校で学校生活をサポートする仕事から多数の児童生徒たちと関わっていた。お金について“progress”(前進)をモットーにわかりやすく伝えていきます。

まりまり先生
高柳万里
金銭教育を受ける機会が全くないまま社会人となっていたことに愕然とし、必要に迫られて平成20年にFP資格取得。「みらいの自分を養うのはいまの自分」をモットーに、保険分野を専門にアドバイスしています。

よっしい先生
袖山佳
大学卒業後、銀行系金融機関勤務。主に住宅ローンや投資信託などの相談・販売を担当。在職相談中に「もっと若いうちに知りたかった」「学校でも教えてほしい」など日本の金銭教育の遅れを実感。現在息子を実験台に、金銭教育をわかりやすく広めるために活動中。

キッズ・マネー・ステーションとは
HP http://www1kinsenkyouikucom

キャッシュレス決済、スマートフォンやゲームの所有など、今の社会の子もたちの環境が目まぐるしく変化する中、物やお金の大切さを知らせたいという想いで設立された団体。全国に約200名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2019年現在までに1300件以上の講座実績を持つ。

八木 陽子 (監修)
出版社: えほんの杜 (2019/11/22)、出典:出版社HP