【最新】地学を学ぶためのおすすめ本 – 中学から大学の教養科目レベルまで

最終更新日

地学とは?地学で何を学べる?

地学とは、地球の内部や表面、大気から宇宙まで、広く私たち人類の生存の基盤を学ぶ学問です。日本は世界的に見ても地震の多い国ですので、地学の中でも特に地震については、日本人なら学んでおきたい分野といえます。しかし、高校では、他の理科科目に比べて地学を履修する人が少ないのが現状です。そこで今回は、地学を中学までしか勉強していない人でも独学で勉強できるような本をご紹介します。





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面白くて眠れなくなる地学 (「面白くて眠れなくなる」シリーズ)

ダイナミックな地学の話

地学に格別な関心が無くても読み物として面白いし、入門するきっかけとしても興味の原点となり得るような本です。足下の地球の内部、地球の表面、地表を覆う大気、はるかな宇宙。そこには地震、台風などの自然災害、毎日の天気など身近な内容のほか、科学者たちの大発見にともなう栄光と挫折の歴史も含まれています。

 

はじめに

ぼくがこの本を書いたのにはわけがあります。

地学は面白い!!

ズバリ、このことを読者のみなさんにわかってもらいたかったからです。ぼくは、自然科学のなかで物理、化学、生物、地学のどれも同じくらい面白いと思っています。自然のすがたを探究して明らかにした人々の悲喜こもごも、その歴史、見出された概念や法則は、どれも面白みにあふれています。「ぼくの専門は、小学校・中学校・高校初級の理科教育であり、もともと中学校・高等学校の理科教師をしていました。そのときのモットーが、「家族で夕食をとるときに、その日の授業の話題で盛り上がるような楽しい授業をしよう」ということでした。

理科の授業を通して、生徒たちが、知って得をした、知って感動した、知って心がゆたかになった、考えてわくわくした……という気持ちをもってくれるといいなと思っていました。自然科学のなかでも、地学はとても幅広い内容をもつ学問です。足下の地球の内部、地球の表面、地表を覆う大気、はるかな宇宙。そこには、地震、火山、台風、豪雨などの自然災害、毎日の天気など、身近な内容も含まれています。

そんな地学ですが、残念ながら高校で学ぶ人は少ないのが現状です。一般の人々の地学についての知識は、中学校の理科レベルにとどまっているといっても過言ではないでしょう。
この本は、そんな人に向けて、地学にまつわるとっておきの内容をまとめました。地学に対して「つまらない」「地味」といった印象をもっている人にこそ、ぜひとも、ドラマチックでダイナミックな地学の魅力をお伝えしたいと思います。

例えば、カバーにあるクイズは、地球の自転速度が次第に遅くなっていることから生じる現象です。約四十六億年前、宇宙空間に広がるガスや塵が回転しながら集まり、太陽ができました。その後、太陽を中心に回転する岩石のかたまりである微惑星が衝突をくり返し、合体しながら地球が誕生します。

誕生したころの地球は、自転で一回転する時間、つまり一日は五時間くらいだったと考えられています。それが現在では二十四時間になっていますから、長い時間をかけて地球の自転速度は遅くなっているということです。今後も次第に遅くなると考えられていることから、一日の時間がもっと長くなると予測されているのです。

地学は、スケールの大きい学問です。これまでにも、先人たちが不思議いっぱい、ドラマいっぱいの世界の扉を一つひとつ開いてきました。わかってきたこともたくさんありますが、まだまだわからないこともたくさん残されています。

自然科学の驚きと喜びを大勢の人と共有できるよう、ぼくは感動する理科、心をゆたかにする理科を目指して、さらに研究していきたいと思っています。

左巻健男

目次

はじめに

Part1
ダイナミックな地球のはなし
アトランティス伝説の真実
世界はもともと一つだった?
アイスランドは地質学的宝庫
世界一高い山はエベレストではない
ヒマラヤ山脈はまだ高くなる?
日本の火山は何タイプ?
火山を愛した郵便局長
化石になるのも楽じゃない
地球は大きな磁石なの?
地球の磁極は逆転している?
大量絶滅はどうして起こったか?
スノーボールアース仮説の衝撃

Part2
知ると楽しい気象のはなし
お風呂の水を抜くと渦はどっち巻き?
台風はなぜ八月と九月に多い?
夕焼けがきれいなら明日は晴れる?
ジェット気流が運んだ秘密兵器。
山の頂上でお菓子の袋がふくらむ理由
高いところが寒いのはなぜ?
夏にひょうが降るふしぎ
冬、新幹線が関ヶ原付近で徐行するわけ

Part3
やっぱりふしぎな宇宙のはなし
地球が宇宙の中心だった?ガリレオが望遠鏡で見た宇宙
宇宙の誕生と元素の合成
地球と金星の運命を分けたもの
月は地球のきょうだいだった?
流れ星を確実に見る秘訣
太陽は永遠に燃え続けるの?
地球に住めなくなったら、どこに移住する?

おわりに
参考文

本文デザイン&イラスト:宇田川由美子





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ひとりで学べる地学  (COLOR LECTURE)

地学の基礎がよくわかる

教科書だけで勉強するのは不安、独学でゼロから始める場合といった方におすすめの一冊です。地学だけでなく地学基礎の学習にも対応しています。受験生の方は、教科書と一緒に使うことをお勧めします。シンプルな参考書で、気象予報士の資格試験を目指す方や一般的な読み物としてもおすすめです。

 

本書の構成と利用法

◆本書の特色

本書は、高等学校で学ぶ「地学」および「地学基礎」のまとめ 考書として編集されたものです。したがって,皆さんが学校で受けている授業を再現しながら,能率よく学習をすすめられるように,教科書を完全に理解できるように工夫されています。いわば家庭教師の役目を果たす,ひとりで学べる参考書です。

写真や図版を豊富に扱い,使う人の視点に立ってわかりやすくなるよう努力しました。本書で基礎的な学力をしっかりと身に付け, ゆとりのある学習活動をしてください。
編集部

◆本書の構成

本書は2ページで1項目(学校の授業で1時間分)の学習内容がマスターできます。
学習の内容を理解しよう

ここは、先生の講義の内容をわかりやすく解説したり,整理してまとめたりしたところです。また,学習のポイントの徹底理解をはかるため、なるべく叙述式にしてあります。
地学基礎を学ぶ人は要チェック

地学基礎の内容を含む範囲には,タイトルの横にこのマークが示してあります。地学基礎の学習は,マークを確認しながらすすめよう。
学習のポイントをしっかりつかもう
1つの項目を学ぶ上で最も重要な事柄が示してあります。しっかり覚えてテストに臨みましょう。
学習の理解をさらに深くしよう。
ここでは、先生の講義の内容や質問が多いことがら,理解しにくいことがらをとりあげて,質問と答えの形式で説明されています。
さらに詳しく、興味をもって学ぼう
さらに詳しい内容や発展的なことがら、内容に関連する興味深いことがらをとりあげています。
実践問題にチャレンジ
各編ごとに定期テストを予想した問題をとりあげています。難しい問題も,解答を読んで理解しよう。

もくじ

◉…地学基礎の内容を含む項目

第Ⅰ編 地球の姿
◉1 地球の形と大きさ
2 地球の表面
3 重力
4 重力異常
5 地磁気
6 地磁気の永年変化と逆転
7 地震波
◉8 地震波と地球内部構造・地震波トモグラフィー
◉9 地殻の構造とアイソスタシー
10 地球内部の圧力・温度と地殻熱流量
11 大陸移動
12 海洋底拡大説
13 海洋底拡大の証拠
◉14 プレートテクトニクス
◉15 プレート境界と地学現象
◉16 地震(1)
◉17 地震(2)
◉18 地震災害
◉19 日本列島のテクトニクス
20 日本列島の形成史(1)
21 日本列島の形成史(2)
実力確認問題

第Ⅱ編 地表の変化
◉1 世界の火山の分布
2 マグマ
◉3 火山活動と火山
◉4 火成岩の産状と組織
◉5 火成岩を作っている鉱物
◉6 火成岩の分類
7 火成岩のでき方とそれに伴う鉱物の性質
8 岩石の風化
9 河川の作用
10 河川による地形の変化
11 海水の作用による地形の変化
◉12 堆積環境と堆積岩
◉13 堆積岩の分類
実力確認問題

第Ⅲ編 地層の観察と地殻の変化
◉1 地層の重なり方
◉2 示準化石
◉3 示相化石
◉4 地質年代
5 地層の走向と傾斜
6 地質調査と地質図
◉7 地殻変動(1)
8 地殻変動(2)
9 造山運動
◉10 変成作用と変成岩
11 鉱床
実力確認問題

第Ⅳ編 地殻と生物界の変遷
◉1 地球の誕生
2 地質時代と生命の起源
◉3 古生物の変遷(1) 先カンブリア時代
◉4 古生物の変遷(2) 古生代
◉5 古生物の変遷(3) 中生代
◉6 古生物の変遷(4) 新生代
◉7 古生物の変遷(5) 新生代第四紀
8 日本列島の地質構造
9 日本列島の変動地形
実力確認問題

第Ⅴ編 地球の熱収支と大気中の水
◉1 大気圏の構造
2 大気圏の組成
◉3 太陽放射のエネルギー
◉4 地球全体の熱収支
◉5 熱収支の緯度による違い
◉6 水の状態と状態変化
◉7 大気中の水蒸気
8 断熱変化
9 大気の安定・不安定
10 水蒸気の凝結と雲の発生
11 雲と霧
12 雨
実力確認問題

第Ⅵ編 大気と海洋の運動
◉1 気圧
2 風の観測
3 熱対流による風
4 風の原動力
5 転向力
6 風の吹き方
◉7 大気の大循環
◉8 大気の大循環と熱輸送
◉9 天気図の見方
10 高層天気図
11 高気圧と気団
12 前線
13 温帯低気圧
14 熱帯低気圧と台風
◉15 日本の気象と季節(1)
◉16 日本の気象と季節(2)
◉17 気象災害と天気予報
◉18 海水の組成と海洋の構造
19 波と潮汐
◉20 海流
21 大気と海洋の相互作用
◉22 エルニーニョとラニーニャ
23 気候の変動
◉24 地球環境の変化
実力確認問題

第Ⅶ編 宇宙の構成
1 天球と座標
2 天体の日周運動
3 自転とその証拠
4 太陽の年周運動
5 公転とその証拠
6 太陽時と標準時
◉7 太陽系の天体
8 惑星の視運動と惑星現象
9 会合周期と公転周期
10 ケプラーの法則と万有引力
◉11 太陽
◉12 太陽活動と太陽放射
13 恒星の明るさと距離
14 絶対等級とスペクトル型
15 恒星のHR図
16 恒星の大きさと質量
17 星間空間と星雲
◉18 恒星の進化
19 変光星と星団
20 銀河系
◉21 銀河と宇宙
実力確認問題

実力確認問題解答
さくいん

元素周期

 

地学ノススメ 「日本列島のいま」を知るために (ブルーバックス)

おもしろくてためになる

大地変動の時代が始まった日本列島に住む人に向けた地学の教養書です。ところどころに挿入されているコラムも楽しく、生々しい地学の現状を知ることができます。地球の成り立ち、構造、地震のメカニズム解明、鎌田浩毅先生の説明が素晴らしく、吸い込まれるように読むことができます。

 

はじめに

地球は宇宙空間に浮かぶ一個の星です。そのことは誰でも知っています。では、その知識はどうやって得たのでしょうか。そもそも「地球」と言っても、地面が丸い球でできていることを実感することはできません。小学生でも知っている「地球は丸い」ことを証明するのは、それほど容易なことではないのです。

二一世紀に生きる私たちは、おびただしい量の知識が集積した上で暮らしていますが、その一つ一つは、先人たちが大変な苦労を積み重ねて獲得した知識です。その「知」の歴史をたどることは、人類の活動そのものを知ることでもあるでしょう。しかも、知的好奇心を満たすだけではなく、私たちの住む地球がいかに特殊で、かけがえのないものであるかを認識することにも繋がるのです。

私は地学を専門とするようになって四〇年ほど経ちますが、その間に地球の不思議にたえず魅せられてきました。とくに、この二〇年は京都大学で学生と院生たちへ地学を教えながら、その面白さと生活上の有用性を説いてきました。講義では「人はいかに地球を認識してきたのか」という話が、初めて地学を学ぶ若者たちを惹きつける格好の材料でした。たとえば、人間の「自然を知りたい」という知的好奇心によって地学がどのように誕生したか、は大変おもしろいテーマです。さらに、四〇〇年前にデカルトによって自然科学の方法論が確立されて以来、科学者たちの努力によって驚くべき地球の姿がいかに明らかになったか、といった「教材」は、地学を最初に学ぶ上で最も興味深いアイテムのひとつでしょう。と同時に、今後の地球がどうなるかを占う未来予測にとっても非常に重要な知識なのです。

こうした理由から、以前より私は京大での講義で「おもしろくてタメになる」というモットーを掲げながら、知識が学生たちの将来に役立つように工夫してきました。

しかし残念ながら、京都大学のように研究を主目的とする大学の講義はあまりおもしろいものにはならず、学生たちの評判は決して高いものではありませんでした。私が担当する一・二年生向けの「地球科学入門」の講義も、ご多分に漏れず若者の興味を惹くものではありません。
そこで私は、京大の講義がおもしろさと有用性を併せ持つものとなるように、二〇年ほど腐心してきました。その一つの試みが、縦書きの「新書」を教科書に使って講義を行うというものでした。

通例、理系科目は数式が並んだ横書きの厚い教科書を使います。しかし私は、これでは初学者に興味を繋ぐことは難しいと考えて、『富士山噴火ハザードマップで読み解く「Xデー」』(講談社ブルーバックス)を執筆し、これを教科書として使いました。結果は上々で、閑古鳥が鳴いていた「地球科学入門」の講義は、立ち見が出るまでになりました。

本書はこのときの経験を活かして、地学の素人の方々にもわかるように平易に、かつ身近な話題を用いて「地学の全体像」が理解できるように組み立てたものです。なぜこのような本を書こうと思ったかというと、講演会の質疑応答などを通じて、「地学とはどういう学問なのか」が一般社会ではよく知られていないことに気づいたからです。そもそも「地学とは何か」を解き明かすベーシックな本が、世の中になかったのです。

地学は「地を学ぶ」と書き、われわれ人類が生きている基盤を学習する学問です。具体的には、硬い岩盤のある地球(固体地球と呼びます)、水や空気が流れている海洋と大気(流体地球と呼びます)がどうしてできたのかを明らかにします。さらに、固体地球や流体地球を取り囲む太陽系の成り立ちを考え、太陽系から銀河系、宇宙へと領域を広げていきます。

それらのすべては、人類の「生存の基盤」を知ることと結びついています。本書はそのための基本的な事項を知ってほしいと考えて書きました。地学のアウトラインを学んだ結果、地学に関心を持つ人々が増え、さらに「地学をやってみよう」という若者が一人でも多く生まれることを願っています。-地学をめぐる問題は、もう一つあります。高校の理科には「地学」の教科が用意されていますが、最近の地学の履修率がきわだって低いのです。

普通科のすべての生徒が選択する基礎科目では、「化学基礎」や「生物基礎」が九〇パーセントを超えるのに対して、「地学基礎」は三四パーセントでしかありません。さらに、その先で6「地学」を選択する生徒は、わずかに一・二%しかいないという報告があります。すなわち、日本人全員の一○○分の一しか高校できちんと地学を学んでいないのです。

これは地学に関心がないのではなく、大学受験用の科目として地学が選ばれにくいのが原因です。以前は理科の四教科はすべてが必修であり、私が通っていた筑波大附属駒場高校の地学は、生徒にとって非常に興味をそそる科目の一つでした。ところが現在では、大学が受験に指定する科目が物理・化学・生物の三科目であることがほとんどで、そのため、地学を開講する高校が激減してしまったというのが実情です。

しかし、高校の地学には、二一世紀になってからの研究の最先端が教えられるという特徴があります。ほかの科目と比べてみると、違いがよくわかります。

数学では一七世紀までに発達した微積分などの内容が教えられ、化学では一九世紀までに発見された内容までが教科書に載ります。また物理では二〇世紀初頭に展開された原子核物理学までが教えられ、生物では少し時代が下りますが二〇世紀後半に進歩した免疫や遺伝子操作までが入っています。

これに対して地学では、まさに今世紀になって新しい研究が展開中のプルーム・テクトニクスや、地球温暖化問題が教科書で扱われているのです。私が「出前授業」で高校生に地学を教える際にも、前の週に印刷された論文の最新の内容を紹介したりしています。つまり、地学には、現代に生きる人々に身近でかつ必要な材料がそのまま使われているのです。

近年の私は、専門領域である火山研究に加えて、「科学の伝道師」としての活動を行っています。その大きな理由は、地学は日本人にとってきわめて重要な知識だと考えるからです。

日本列島では地震や噴火が頻発していますが、これは二〇一一年に起きた東日本大震災(いわゆる「3.1」)と関係があるのです。あのマグニチュード9という巨大地震によって、日本列島の地盤は不安定になりました。最近よく起きる地震と噴火は、地盤に加えられた歪みを解消しようとして発生しているのです。

こうした事実に対して私は、一○○○年ぶりの「大地変動の時代」が始まってしまった、と警鐘を鳴らしてきました。おそらく今後、数十年という期間にわたって、地震と噴火は止むことはないと予想されています。

これに加えて、おびただしい数の人を巻き込む激甚災害が近い将来に控えています。すなわち、首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山をはじめとする活火山の噴火などの、地球にまつわる自然災害が、いつ起きても不思議ではない時代に入っているのです。こうした大事なことを学校で学ぶ機会が減っているのは、国民的損失ではないかと私は危惧しています。-地学の知識は、単に好奇心を満たすだけではなく、災害から自分の身を守る際にもたいへん役立つものです。その意味からも、私は一人でも多くの日本人に、地学に関心を持っていただくことを願っています。そのために日本列島で始まった種々の地殻変動がいかなるメカニズムで起きでいるかを理解し、効果的な対処をしていただきたいのです。

イギリスの学者フランシス・ベーコンが説いた「知識は力なり」というフレーズは、まさに現代の日本社会に当てはまるものです。本書では地学の中でもわれわれに身近なテーマに絞り、ポイントをわかりやすく解説しました。読み終えた暁には、地学が「おもしろくてタメになる」ことに賛同していただけるのではないかと思います。では、人類が三〇〇〇年もかけて築き上げてきた地学の世界へご案内しましょう。

鎌田浩毅

 

目次

はじめに

第1章 地球は丸かった
人類がそのことには気づくまで
「一年の長さ」が決まるまで地球はどうやら球形らしい。
「地球の大きさ」に挑んだ男
子午線の長さを測る
地球は本当に球形か
「地球の形」をめぐる国際論争
人工衛星で地球を測る
歩いて地球を測った男

第2章 地球の歴史を編む
地層と化石という「古文書」
地層累重の法則
地層の対比と「鍵層」
「古文書」としての化石
時代を示す「示相化石」
世界初の地質図の誕生
地質学の原点は「露頭観察」

第3章 過去は未来を語るか
斉一説と激変説
「ノアの洪水」は起きたのか
博物学の誕生
「地球の年齢」をめぐる格闘
ハットンの「斉一説」
キュビエの「激変説」
斉一説と激変説の論争
放射年代による地球の年齢決定
現在の仮説:巻き返してきた激変説

第4章 そして革命は起こった
動いていた大陸
世界地図からのひらめき
なぜウェゲナーだけが気づいたのか?
中央海嶺の発見
大陸移動説の復活
「海洋底拡大説」の誕生
「地磁気の逆転」を発見した日本人
プレート・テクトニクス説の誕生
地球科学の「革命」
ヒマラヤ山脈の誕生
ヨーロッパ・アルプスの形成
アルプス山脈の内部構造

第5章 マグマのサイエンス
地球は軟らかい
火山は地球の熱を効率よく放射している
火山ができる場所は三通り
地球最大の火山は中央海嶺
「沈み込み帯の火山」が密集する日本列島
マグマとはマントルが水を吸収して溶けたもの
冷たい水がマグマをつくる
ダイアピルの上昇と停止
岩石を溶かす「二つの方法」
「減圧」によるマグマが最も多い
火の三つのモデル

第6章 もうひとつの革命
対流していたマントル
プレートの下には軟らかいマントルがある
固体も「流れる」
新しい視点と新しい用語
地震の波でプレートが見える
コールドプルームとホットプルーム
プルーム・テクトニクスの成立
核内部の大循環
対流が生じるメカニズム
生命を守る地球の磁場
生命と地球の「共進化」

第7章 大量絶滅のメカニズム
地球が生物に襲いかかるとき
二億五○○○万年前の大量絶滅
シベリアの洪水玄武岩
コールドプルームがもたらす地磁気の逆転
ホットプルームが引き起こした「プルームの冬」
洪水のように溶岩が噴出する!
超大陸パンゲアの分裂
マグマが大陸を割って入る
ペルム紀末の巨大火成岩石区
地球の歴史区分の考え方
地球の歴史に「例外は当たり前」

第8章 日本列島の地学
西日本大震災は必ず来る
地震を起こすのは「プレートの動き」
巨大地震はどうして起きるのか
いまだに止まない余震
内陸で起きる直下型地震
首都直下地震
発生前から命名されている「西日本大震災」
南海トラフ巨大地震の被害予測
南海トラフ巨大地震は約二〇年後に起きる
前代未聞の直下型地震――熊本地震
「豊肥火山地域」の特異な地質構造
大分-熊本構造線は中央構造線の延長
プル・アパート構造と右横ずれ運動
南海トラフ巨大地震との関係は?

第9章 巨大噴火のリスク
脅威は、地震だけではない
大噴火期に入った桜島
九万人が犠牲となった巨大噴火
世界中で夏が消えた
白頭山の「史上最大の噴火」
白頭山噴火で起きたこと
もしまた白頭山が噴火したら
巨大地震と連動するか
地下のマグマ観測
ピナトゥポ火山の大噴火
文明を滅ぼした噴火
日本列島の巨大噴火

コラム
①鎌田先生はなぜ地学の研究者を志したのですか?
②地学を研究していて最も驚いたことは?
③日本の地学研究や地学教育は世界の大学で地学を学ぶにはどんな学部で盛んなほうですか?
④日本の地学研究者はどのような業績をあげていますか?
⑤最近の地学で最も目ざましい研究成果は何ですか?
⑥地学研究において鎌田先生が最もこだわっているものは?
⑦大学で地学を学ぶにはどんな学部に進めばよいですか?
⑧独学で学んだことを生かせる仕事にはどんなものがありますか?

あとがき
さくいん





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視覚でとらえるフォトサイエンス地学図録

地学の全てがよくわかる

本図録は全ページフルカラーです。各ページの構成は写真や図表あるいはグラフ・イラストを中心においてまとめられており、文字での解説は補足的になっています。図録という名にふさわしい構成です。地学の用語を丸暗記していくのではなく写真や図表で理解しイメージしながら知識を確認していくというのにとても役立ちます。

 

本書の構成

本文は写真と図を中心としたビジュアルな構成です。紙面は次のような要素から構成され, 幅広く学べるようになっています。

Zoom up
少しレベルの高い内容や、 細かい知識にふれています。

Column
地学に関連した話題を 取りあげました。

まとめ
学習した内容をまとめました。 知識の整理を行えます。

英語
基本的な用語を取りあげ, 英語を示しました。

Newspaper
地学と実生活との関わりを 実感できるよう, 実際の新聞記事を紹介しました。

特集のページ
新聞やニュースで 取り上げられているような題材や, 最新の研究などを扱いました。

序編 太陽系
Ⅰ太陽系の天体
Ⅱ惑星の運動

第1編 地球の構成と活動
Ⅰ地球の形と重力・地磁気
Ⅱ地球の内部
Ⅲプレートの運動
Ⅳ地震と地殻変動
Ⅴ火山
Ⅵ変成作用

第2編 地球の歴史
Ⅰ地表の変化と堆積岩
Ⅱ地層の観察
Ⅲ地球環境と生物の変遷
Ⅳ日本列島の成りたち

第3編 地球の大気と海洋
Ⅰ大気の構造と運動
Ⅱ海洋の構造と運動
Ⅲ大気と海洋の相互作用

第4編 地球の環境
Ⅰ環境と人間
Ⅱ日本の自然災害

第5編 太陽と宇宙
Ⅰ太陽
Ⅱ恒星の世界
Ⅲ宇宙と銀河

目次

序編 太陽系
第1章 太陽系の天体
1 太陽系の中の地球
A.惑星の大きさと太陽からの距離
B.太陽系のおもな天体とその軌道
2 惑星(1)
A.水星 B.金星 C.火星
3 惑星(2)
A.木星 B.土星 C.天王星 D.海王星
4 衛星
A.月 B.火星の衛星 C.木星の衛星
D.土星の衛星 E.その他の衛星
5 小天体と塵
A. 小惑星 B.太陽系外縁天体 C.彗星 D.流星
6 隕石と系外惑星
A.隕石 B.系外惑星
7 太陽系の誕生
A.太陽系の誕生 B.月の誕生と内部構造
C.惑星の形成と内部構造 D.地球の進化

第Ⅱ章 惑星の運動
8 天球座標と暦
A.天球座標 B.暦 C.時刻
9 地球の自転
A.天体の日周運動 B.フーコーの振り子
C.歳差運動
10 地球の公転
A.太陽の年周運動 B.地球の公転
11 惑星の運動
A.惑星の視運動 B.会合周期 C.ケプラーの法則

第1編 地球の構成と活動
第I章 地球の形と重力・地磁気
1 地球の形と大きさ
A.地球の概形と大きさ B.地球だ円体
C.標高の基準 D.地球の表面
2 重力
A.引力と重力 B.重力異常
3 地磁気
A.地磁気 B.地磁気の分布
C.残留磁気 D.地磁気の逆転
第Ⅱ章 地球の内部
4 地球の構造
A.地球内部の層構造 B.地球内部の組成
C.地球内部の性質 D.アイソスタシー
5 地球内部を伝わる地震波・地殻熱流量
A.地震波の伝わり方 B.地球内部を伝わる地震波
C.モホロビチッチ不連続面 D.地殻熱流量
第Ⅲ章 プレートの運動
6 大陸移動とホットスポット
A.大陸移動説 B.海洋底拡大説と古地磁気
C.ホットスポット
7 プレートテクトニクス
A.プレートテクトニクス B.地震・火山の分布
8 プレートの境界
A.プレート発散境界 B.プレートすれ違い現象
C.プレート収束境界
9 プレート運動のしくみとマントル対流
A.プレート運動のしくみ B.マントル対流

ニュースペーパー タイトル一覧
地磁気逆転の発見につながった玄武洞
はやぶさ2リュウグウへ到着
フレアによる地磁気の乱れ
山の標高が変わった?
水月湖の年縞
伊豆半島が世界ジオパークに認定
爆弾低気圧

まとめ タイトル一覧
地球型惑星と木星型惑星
岩石の移り変わり
温帯低気圧と熱帯低気圧
太陽の進化

第IV章 地震と地殻変動
10 地震の発生
A.地震発生のしくみ B.震度とマグニチュード C.本震と余震
11 断層と震源
A.震源の決定 B.断層と押し波・引き波
12 地震の起こる場所
A.プレートの運動と地震
B.日本列島周辺の地震分布 C.深発地震面
D.アスペリティ E.日本で起きる地震
13 活断層
14 地殻変動
A.地殻変動と測量
第V章 火山
15 火山噴火と火山噴出物
A.日本の火山 B.火山噴火のしくみ
C.火山噴出物 D.溶岩流の形状
16 火山とマグマ
A.マグマの発生と変化 B.火山ができる場所
C.沈みこみ帯でのマグマの生成
17 噴火の様式と火山地形
A.噴火の様式 B.火山地形
18 鉱物
A.おもな造岩鉱物 B.多形・固溶体
C.さまざまな鉱物
19 鉱物の観察
A.鉱物の性質 B.偏光顕微鏡
C.偏光顕微鏡による鉱物の観察
20 火成岩の分類と産状
A.火成岩の分類 B.火成岩の組織と化学組成
C.火成岩の産状日
21 火成岩の露頭と岩石
22 さまざまな火成岩
A.火成岩と色
第Ⅵ章 変成作用
23 変成作用(1)
A.変成作用 B.温度・圧力の変化と変成作用
24 変成作用(2)
A.変成岩の露頭と岩石 B.日本の変成帯

第2編 地球の歴史
第Ⅰ章 地表の変化と堆積岩
1 地表の変化(1)
A.地表の変化 B.風化 C.土壌
2 地表の変化(2)
A.河川地形 B.河川のはたらき
C.河岸段丘と海岸段丘地
3 地表の変化(3)
A.海岸地形 B.風の作用と地形
4 地表の変化(4)
A.氷河地形 B.堆積の場所
5 堆積岩
A.堆積物と堆積岩 B.続成作用
第Ⅱ章 地層の観察
6 地層の形成
A.地層 B.整合と不整合
C.混濁流・タービダイト
7 堆積構造
A.断層と摺曲 B.堆積構造と堆積環境
8 地質図(1)
A.地質図と地質調査 B.走向・傾斜の測定
C.地質調査の方法
9 地質図(2)
A.地質図の作成方法 B.露頭線のつなぎ方
C.地質平面図の読み方
10 地質図(3)
A.地質図の例
第Ⅲ章 地球環境と生物の変遷
11 化石
A.化石のでき方 B.さまざまな化石
C.示準化石と示相化石 D.微化石
12 地層の対比
A.地質柱状図 B.地質柱状図と地層の分布
C.火山灰鍵層による地層の対比
D.示準化石による地層の対比
13 地質時代の区分と数値年代
A.時代の区分 B.数値年代
14 先カリンブリア時代
A.原始大気・原始海洋の形成 B.最古の岩石
C.大気の進化と縞状鉄鉱層
D.真核生物の誕生 E.全球凍結
F.エディアカラ生物群
15 古生代
A.生物の陸上進出
16 中生代
A.アンモナイトの進化 B.中生代の温暖化
17 大量絶滅と進化
A.絶滅と進化の関係 B.古生代末の大量絶滅
C.中生代末の大量絶滅 D.大空への進出
18 新生代(1)
A.哺乳類の繁栄 B.人類の進化
19 新生代(2)
A.氷期と間氷期 B.海進と海退
第Ⅳ章 日本列島の成りたち
20 日本列島の生いたち
A.日本列島形成の歴史
21 日本列島の地体構造
A.日本列島の地体構造
B.日本列島の地質断面と付加体

第3編 地球の大気と海洋
第Ⅰ章 大気の構造と運動
1 大気の構造
A.大気の組成 B.大気の層構造 C.大気圧
2 雲の形成と降水のしくみ
A.大気中の水蒸気 B.雲の形成 C.降水のしくみ
3 大気の安定性
A.大気の安定性 B.フェーン現象
4 地球全体の熱収支
A.太陽放射と地球放射
B.地球全体のエネルギー収支 C.温室効果
5 大気の大循環
A.熱収支の不均衡と熱輸送 B.大気の大循環
C.大気の大規模な流れ
6 温帯低気圧と偏西風波動
A.前線 B.温帯低気圧 C.偏西風波動
7 高層天気図と上空の風
A.高層天気図 B.上空の風
8 日本の天気(1)
A.気団 B.春の天気口
9 日本の天気(2)
A.梅雨・夏・秋の天気 B.冬の天気
10 熱帯低気圧
A,熱帯低気圧 B.台風
11 日本の気象観測網
第Ⅱ章 海洋の構造と運動
12 海洋の構造
A.海水の組成 B.海洋の層構造
13 海水の運動
A.エクマン吹送流と地衡流
14 海洋の大循環
A.海洋表層の水平循環
B.北太平洋と日本付近の海流
C.海洋の鉛直循環
15 波と潮汐
A.波の性質 B.海洋に生じる波 C.潮汐
第Ⅲ章 大気と海洋の相互作用
16 大気と海流の相互作用
A.エルニーニョ・ラニーニャ B.地球上の水の循環

第4編 地球の環境
第Ⅰ章 環境と人間
1 人間をとりまく自然
A地球システム B.自然の恵み
2 鉱物資源・エネルギー
A.地球資源 B.鉱物資源と鉱床
C.化石燃料 D.再生可能エネルギー
3 気候変動
A.気候変動の要因 B.温暖化する地理
C.気候変動の予測
4 地球環境問題(1)
A.地球温暖化の影響 B.オゾン層の破壊
C.森林破壊
5 地球環境問題(2)
A.砂漠化 B.黄砂 C.大気汚染 D酸性雨
第Ⅱ章 日本の自然災害
6 地震災害
A.地震災害の種類 B.液状化現象
C.津波 D.日本の地震災害
7 火山災害
A.火山災害の種類
B.おもな噴火記録と災害
8 土砂災害
A.土砂害の原因 B.斜面崩壊 C.地すべり
D.土石流 E.土砂災害への対応
9 気象災害
A.台風 B.集中豪雨
C.竜巻 D,雪による災害
10 防災・減災
A.地震の予測と防災 B.火山噴火の予測と防災

特集
1 はやぶさ2と小惑星リュウグウ
2 天体観測の基礎
3 地球内部を探る
4 東北地方太平洋沖地震
5 宝石の科学
6 生命の誕生と進化
7 恐竜学の最前線
8 ジオパーク
9 いろいろな雲
10 地球温暖化と気候系の自然変動
11 太陽活動の移り変わり
12 宇宙の観測

第5編 太陽と宇宙
第1章 太陽
1 太陽の構造(1)
A.太陽の構造 B.太陽のエネルギー源
C.太陽の表面 D.太陽の自転
2 太陽の構造(2)
A.太陽の大気 B.太陽のスペクトル
3 太陽の活動
A.フレア B.太陽風 C.太陽の周期活動
D.太陽の活動と地球への影響
第Ⅱ章 恒星の世界
4 恒星の性質
A.見かけの等級 B.絶対等級
C.恒星までの距離 D.恒星の色とスペクトル型
5 恒星の進化
A.HR図 B.恒星の進化
6 星団と星間雲
A.星団 B.星間雲
7 恒星観測の応用
A.連星 B.脈動変光星

第Ⅲ章 宇宙と銀河
8 銀河系と銀河
A.銀河系 B.銀河の分類 C.活動銀河
9 宇宙の構造
A.銀河群 B.銀河団 C.宇宙の大規模構造
10 宇宙観の発展
A.宇宙の膨張 B.宇宙の進化

巻末資料
1 気象庁震度階級関連解説表(抜粋)
2 おもな鉱物の分類
3 大気の諸量
4 飽和水蒸気圧
5 気象庁が発表する注意報・警報
6 天気図の記号
7 台風の名称
8 惑星の諸量
9 準惑星・冥王星型天体
10 おもな衛星の諸量
11 恒星の諸量
12 地学学習のための基礎知識

コラム タイトル一覧
人類初の月面着陸
スペースガード
次世代超大型望遠鏡TMT
太陽が描く8の字
天動説と地動説
ヨハネス・ケプラー
場所によって変わる重力の大きさ
地球内部の組成推定
成長を続ける西之島
ミマツダイアグラム
地下における水の振る舞い
身近な石材
生きている化石
霊長類化石「イーダ」
360万年前の足跡
大気は高度何kmまであるか?
熱くない熱圏
なぜ雲凝結核が必要か?
「大気の状態が不安定」とは?
逆転層
南岸低気圧と春一番
日本の自然トップ3
ウラン鉱石
メタンハイドレート
水素(燃料電池)
IPCC
ヒートアイランド現象
破局噴火と巨大カルデラ火山
山体崩壊と岩屑なだれ
地すべり・斜面崩壊とスキー場
日食や月食が起こるしくみとは?
天体カタログ

ズームアップ タイトル一覧
ボーデの法則
地磁気の成因と時間変化
地球内部の熱源
地波トモグラフィー
震源メカニズム
カルテラ
水蒸気噴火
ジオパーク
包有岩
日本海の拡大
オゾン層の成因と役割
偏西風波動のモデル実験
温度風
フィードバックとシステムの安定性
ミランコビッチサイクル
長周期地震動
深層崩壊
ニュートリノ
太陽の周期活動の原因
標準光源法
中性子星とパルサー
ブラックホール
腕が巻きつかない理由
ダークマター
ダークエネルギー

 





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やりなおし高校地学 (ちくま新書)

地学に必須の知識がこの1冊でわかる

この本を読むと、高校地学の内容だけでなく、新しい学習指導要領が目指しているもの、すなわち日本の将来を背負って立つ子どもたちの未来も知ることができます。センター試験の問題と解答解説を挟みながら、地質・気象・天文の順に、高校地学のおさらいをすることができます。

まえがき

地学は高校で教えられる理科の4科目のうちの一つです。その学習内容の中身を大まかに分けると、「固体地球」、「岩石・鉱物」「地質・歴史」「大気・海洋」「宇宙」の5分野になります。これらはいずれも人類の居場所である地球と密接に関連するものです。すなわち、地学はほかの理科3科目と比べて日常生活に最も近い科目なのです。

いま私たちがこうやってここに居られるのは、地球という「居場所」があるからです。 人類のふるさと、地球はどうやってできたのでしょうか?そして、いつまで私たちはここに居られるのでしょうか?

地球は太陽系の一部です。8つの惑星を持つ太陽系が誕生したのは、今から約3億年も大昔のことでした。宇宙空間に漂っていた岩石や氷、チリが集まって太陽となり、その周囲に地球が回り始めました。今から5億年前の出来事です。

太陽系に水星、金星、火星、木星など惑星ができるなか、地球にとって幸運だったのは、 大量の水があったことです。水は生命を育むうえで不可欠の物質なのです。

水は0℃で凍り、100℃で沸騰する性質を持っています。そして水が液体の状態でいられるためには、温度が0℃と100℃の間でなければなりません。太陽に近い金星は熱すぎて、水がすべて蒸発してしまいました。

その反対に、太陽から遠い火星は寒すぎて、凍り付いてしまったのです。すなわち、地球は偶然、太陽からほどよい距離にあったため、水が液体の状態で残りました。今から10 億年も前からずっと、地表には海が大量の水をたたえてきたのです。

そのおかげで地球にはある温度範囲の安定した環境が生まれ、生命を宿すことができました。生命誕生という今から8億年も前の事件です。

最初に出現した生物はバクテリアのような単細胞でした。ここから多細胞生物へと進化 し、さらに体から手足が出てきて脳ができ、やがて人類にまで進化しました。

ここには厳しい宇宙空間で特異な環境が8億年間も守られてきた歴史があります。実は、 生命が生まれて、一度も途絶えなかったのは、礎の集積と言っても過言ではありません。 というのは、地球上の生物は何度も絶滅の危機を乗り越え、現在まで生き延びてきたからです。地学はこうした壮大な歴史の上に成り立つ学問なのです。

絶滅の生存者が次代の覇者に

さて、「古生代」「中生代」「新生代」という言葉を理科の授業で習ったことがあるでしょう。いずれも地球の歴史を区切る言葉ですが、「生」は生物、「代」は時代を表します。
ここで「生物の時代」と表現するのは、地球の歴史は生物の種類がガラッと変わることで決められたからです。なぜ変わったかというと、その境目で生物が大量に絶滅したからです。
たとえば、5億4000万年前に始まった古生代では、2億5000万年前に全生物種 の3~5%が死滅する大惨事が起きました。そして、生き残ったわずか5%ほどの生物が次代の覇者となって進化していったのです。古生代の次に来る中生代が恐竜の時代であったことは有名です。絶滅を生き延びたものが次代の覇者になったのです。

その恐竜も今から6500万年前に、巨大隕石が地球に落ちて絶滅しました。高さ300mの大津波が陸を襲い、飛散したチリが日光を遮って極度の寒冷化に向かったのです。
その過酷な条件下で生き延びたのが哺乳類で、次の新生代の覇者となって現在にいたります。人類が地球上で繁栄したのは、恐竜が滅びたからでもあるのです。
こうした現象をひとことで言うと「地球の歴史は想定外の繰り返し」です。恐竜にとってはとんでもない想定外、しかし哺乳類にとっては千載一遇のチャンスでした。ほとんどの生物は絶滅するが、全部は死なない。必ず生き残る者がいて、それが次代を作っていきます。地球の歴史はそれを絶え間なく繰り返してきたのです。

したがって、地球上で生物が完全に絶滅していたら人類はここに存在しない。だから、 現存する生物はみな8億年の連続性を持っているのです。言い換えると、我々は全員8億歳と考えられます。
もし20歳の学生ならば3億歳プラス20歳、8歳で還暦を迎えた人は8億歳プラス8歳な のです。こうした見方こそ人類が地球という居場所に存在する意味であり、それを教えて くれるのが地学なのです。

「大地変動の時代」に入った日本

さて、日本列島は2011年3月1日に、マグニチュード9の巨大地震、つまり東日本大震災に見舞われました。このクラスの巨大地震が起きたのは平安時代以来、千年ぶりのことでした。
東日本大震災を境に、日本列島は「大地変動の時代」に入ってしまいました。何枚ものプレート(岩板)が接する日本では、ときどき地震が起きます。日本にやってきた外国人 が一番驚くのが、この地震です。

彼らから見れば人が住んでいることを不思議に思うほどの地理的条件にあります。にもかかわらず、日本の高校・大学ではいま、「地学離れ」が進み、高校での履修率は5%と極めて低い状態です。つまり、大多数の日本人の「地学リテラシー」は中学レベルで止まったままなのです。複数のプレートがひしめく日本で生き延びるには、本当は地学の知識が不可欠です。
これまで私は「科学の伝道師」として、専門である地学の「おもしろいところ」「ため になるところ」を学生や市民に伝えてきました。本書はそのエッセンスを一冊に詰め込んだものです。
さらに、地学のセンター試験など大学入試に用意された問題を解きながら、じっくりと地学を学んでいきます。解答と解説の中で、地学の知識をわかりやすく織り込みました。
具体的には、地球内部の構造から、日本列島の成り立ち、地震と噴火のメカニズム、地球温暖化問題、さらに宇宙の歴史まで解説します。

日本人にとって必須の地学の教養を今こそ身につけていただきたいと切に願っています。 言わば、すべての日本人に捧げる「サバイバルのための地学入門」という意味を込めて書きました。
それでは入試問題を解きながら、楽しく高校地学を学んでみましょう。

鎌田浩毅

目次

まえがき
絶滅の生存者が次代の覇者に/「大地変動の時代」に入った日本
第1章 地球とは何か
1 地球はどのようにできたのか?
原始太陽ができたおかげで惑星ができた/マグマオーシャンが冷えることで地球の核と大気・ 海洋ができた
2 地球の形と大きさ
地球が丸いことに気づいたのは?/地球の大きさはどうしてわかる?/ニュートンが考えた回 転楕円体/ジオイドで知る、地球のかたち/アイソスタシーとは何か/ある地点における「重 力」は、どのように計算するか
3 地球は巨大な「磁石」である
地磁気とは何か/地磁気はなぜできたのか?/生命を守る地球の磁場

第2章 地球は生きている!―その活動をさぐる
1 地球の内部はどうなっているのか?
地球の内部構造を卵に置き換えて考える/地球内部の熱はどこから来たのか
2 大地は動く――地球の活動の謎を解く
大陸移動説とは何か――中央海嶺の発見/海底は動いている/地磁気の逆転が、日本の千葉で起 こっていたT/プレートとはどんなもの?/プレートの運動でさまざまな現象が解決する/沈み込んだプレートの行方――プルーム・テクトニクス/地震が起こるのもプレート・テクトニクスのため/火山はどうしてできるのか

第3章 地球の歴史を藩く
1 地球の「変化」「成長」の手がかりとは
時代の情報と環境の情報/地層を「読む」ための基本ルール
2 地質学とは何か
地層を「つないで」推測する/世界中に分布した化石を利用する方法/各年代と生物にとっての大事件/地質学の誕生―スミスの功績/放射性元素を利用する
3 岩石の「読み方」
岩石の「でき方」/火成岩は何からできているのか/火成岩の種類/岩石から時代の情報を読み解くには/岩石を生む「変成」とは何か

第4章 日本列島の成り立ち
1 日本列島は地学的にはどのようなキャラなのか?
4つのプレートが押し合いへし合いする現場/日本列島は地震の巣である
2 日本列島はどのような岩石からできているか
日本列島は大陸から分離してできあがった/ホットプルームと日本列島/日本列島へ「岩石が 付加される」とはどういうことか?/日本列島はこのように形作られた
3 日本列島の形ができるまで
日本列島の起源と形成のプロセス/フォッサマグナとは何か/活火山を背骨とする日本列島/ プレート運動が各地の地形を作った
4 日本列島の特徴
火山活動が地上に残す爪痕/火山と共存するための心構え/富士山が世界にも稀な火山であるワケ/西南日本が警戒すべき巨大断層・南海トラフとは/九州にも「地震の巣」がある/液状化現象という二次被害/津波の発生するメカニズム

第5章 動く大気・動く海洋の構造
1 地球を覆う大気の構造
大気が気象の「決め手」となる/大気はどのような構造をしているか
2 地球上の温度が一定に保たれる仕組み
太陽エネルギーが地球を暖める/地球から出ていくエネルギーもある/「温室」効果をもたらす気 体/日本の「猛暑」は温暖化のせい?/ヒートアイランドはなぜ起こる?/地球規模で見ると….
3 大気が大循環するメカニズム
緯度によって変わる気流/赤道近くで大気はどう動くか/中緯度・高緯度地域ではどう動くか /地球の自転が気流にどうかかわるか
4 海洋も大循環している
水が動けば気象も変わる/大循環する海水の不思議/海水の動きには月と太陽も影響する/風 と海流によって起こるエルニーニョ現象/地球は「ミニ氷河期」に向かっている?

第6章 宇宙とは何か
1 宇宙の誕生と構造
宇宙の始まりはビッグバン!/宇宙に元素ができるまで/宇宙に銀河ができるまで/ダークマ ターと宇宙の構造
2 恒星の誕生と進化
恒星ができるまで/主系列星の大きさと寿命/恒星の終焉と赤色巨星/赤色巨星以降の恒星の 進化と終末/恒星の進化がわかるHR図
3 私たちの銀河系
銀河系の構造/銀河系の公転と中心部
4 さまざまな銀河と膨張する宇宙
銀河の形による分類/活動する銀河/膨張する宇宙
あとがき
地学の勉強法/人類の存立基盤について知る/高校地学をめぐる現状/「大地変動の時代」の地 学/「長尺の目」で地球を考える

参考文献

索引

編集協力=水野昌彦
本文図版=朝日メディアインターナショナル

もういちど読む数研の高校地学

地学現象を基礎から理解

数研出版の新課程用「地学基礎」「地学」の教科書をベースに1冊の書籍にまとめたもので、分野ごとにきちんと整理されています。カラフルな視覚的説明が多用されていて非常に分かりやすい構成になっています。

 

目次

第1編 地球の構成と内部のエネルギー
第1章 地球の形と重力・地磁気
1. 地球の形と重力
2.重力異常
3. 地球の磁気
第2章 地球の内部
1. 地球の内部構造
2. 地球内部の状態と構成物質
3.地殻熱流量

第2編 地球の活動
第1章 プレートテクトニクス
1. プレートテクトニクス成立の歴史
2. プレートテクトニクス
3. プルームテクトニクス
第2章 地震と火山
1. 地震
2. 火成活動
3. 火成岩
第3章 変成作用と造山運動
1.変成作用
2. 造山運動

第3編 地球の大気と海洋
第1章 大気の構造と運動
1. 大気の構造
2. 地球全体の熱収支
3. 大気の大循環
4. 大気中の対流と水蒸気の役割
5. 日本付近の気象の特徴
6. 世界の気象と気候
第2章 海洋と海水の運動
1. 海洋の構造
2.海洋の大循環
3. 海面の運動
第3章 大気と海洋の相互作用
1. 大気と海洋の相互作用
2.水や炭素の循環

第4編 地球表層の水の動き締
第1章 地表の変化
1. 岩石の風化
2. 砕屑粒子の運搬・堆積作用
第2章 地層の観察
1. 地層の形成と堆積岩
2. 地層の観察
3. 野外調査と地質図

第5編 地球の環境と生物の変遷
第1章 地球環境の変遷と生物の変遷
1. 地質時代の区分と化石
2. 地球の誕生
3. 古生物の変遷
4.地球環境の変遷
第2章 日本列島の成り立ち
1. 日本列島の地体構造
2.日本列島の生い立ち

第6編 宇宙の構造
第1章太陽系
1. 太陽系の天体
2. 地球の自転と公転
3. 惑星の運動
第2章 太陽
1. 太陽の表面
2. 太陽の活動
第3章 恒星の世界
1. 恒星の性質
2. 恒星の進化
3.星団
4.星間物質と星間雲
第4章 宇宙と銀河
1. 銀河系の構造
2. 銀河の世界
3. 宇宙観の発展

第7編地球の環境
第1章 環境と人間
1.環境と人間
2.地球環境問題
第2章 日本の自然環境
1. 日本の自然環境
2.日本の自然災害

本文資料
1. 地学に必要な予備知識
2. 地学のための数学の知識
3. 気象庁震度階級関連解説表
4. 天気図の記号
5. 惑星の諸量
6. 天球座標

 

 

索引

 

 

 

地学を学ぶにあたって

日本の惑星探査機「はやぶさ」は, 小惑星「イトカワ」に着陸し,地球を出発してから7年後の 2010年 6月,微粒子をもち帰った。人類 史上初めての、惑星・小惑星からのサンプル・リターンであった。 最大径 0.18 mmの,総計1500 個の微粒子ではあったが,粋を集めた研究によって,惑星や地球の形成に関して多くの新事実が明らかになりつつある。

その一つに、宇宙風化現象の解明がある。小惑星の衝突により飛び散った破片が再集積してできた「イトカワ」には、地球と違って大気も磁場もない。そのため、太陽風粒子や宇宙塵の継続的な衝突を受け、表面にある岩石の鉱物は、その表面に微小なクレーターがあいた り,非結晶化し表面剥離を起こしたりしている。「イトカワ」は、このような宇宙風化によって、100万年に10 cmの割合で細っており,現在,長径500mほどあるが、10億年後には消滅するとの計算もなされている。

 

 

このような事実がわかったのも, 科学技術の進歩とともに、地球や惑星,宇宙といった地学の対象になる事物の研究が連綿として続けられてきたからである。研究の発端やその解明へ向けての方法論の確立まで、遠い道のりがあったはずだ。21世紀初頭の今日、それらの一つの到達点が,小惑星「イトカワ」の形成史の解明であったといえる。

太古の昔から,人類は自然の中 で自然と向き合い、自然とともに, またある場合には,自然に立ち向かって生活してきた。自然に畏敬を抱いていたかもしれない。
人類の自然に関する知識は,かなり昔においても,分野によっては驚くほど正確なものであった。今から数千年も前にメソポタミアで, あるいは、約千年も前にそれとは独立にマヤで,正確な天文暦が作られていたといわれる。

 

農耕の始まりとともに、天体の運行から季節を読みとるために,また、宗教的儀式のために,天体観測によって暦が作られたのである。
人類の進歩は、私たちの生活や知識を非常に高めたことは事実である。特に、農業や医療を始め多くの科学技術の進歩のおかげで,人口は増え、寿命は飛躍的に伸びた。

人や物の流れ、情報の交換は量・速さともに増した。今や情報は瞬時に世界中に伝わる。
ところが,産業革命以降,人口の増加と生産の増大,生活水準の高度化に伴い、大気中の温室効果ガスの濃度が著しく増加し,それが海水準変動や異常気象など気候状態の変化を招いているのではないか,ともいわれている。また,こうした人為的な要因による森林伐採や汚染物質の排出が環境変化を招いている。
2011年3月に東日本を襲った巨大地震とそれに関係するさまざまな事象は,私たちの自然への知識や備え,理解がまだ不十分であったことを思い知らせた。
今,もし,近代都市のどれかが, ポンペイの遺跡のように瞬時にして埋まり,それが何百年,何千年 後に掘り起こされたとすると,発掘した人たちは、21世紀の人々はさぞかし高度な物質的生活を送っていたことだろう、と思うに違いない。私たちは過去を歴史として知っている有利さがある。しかし、正確な未来予測に関しては,すべての分野でなされているわけではない。

 

 

21 世紀を迎え,宇宙と地球と,地球上の生命の研究は,大いに進んだが,一方で、不十分さもわかってきた。
地学現象の理解と地学現象による災害への対策は,私たちの世界観 をも支配するようになっている。「地学」は,私たちの生きる場の知識を、宇宙と地球の起源と形成史を、環境の変化と生命の進化などの知識を授けてくれ、生きるために必要な情報を与えてくれる。しかし,未来をより正確に予測するにはどうしたらよいだろうか。「地学」の果たす役割や責任は,誠に大きいものがある。
皆さんは、地学のもつさまざまな内容,方法,考え方を、本書をもとに学んでほしい。皆さんの未来のために。

 





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新しい高校地学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)

科学的素養が身に付く1冊

本書は大変丁寧でわかり易い教科書です。特に学生時代終了から大分時間を空けてしまった社会人が、何かのきっかけでもう一度この分野の知識に触れてみたいと思った時、本書は大変よいガイド役になってくれます。適度に図表を織り込んだ流れのよい丁寧な記載は、多くの個所で納得感のあるを理解を促してくれます。

 

・カバー装幀/芦澤泰偉・児崎雅淑
・カバーイラスト/山田博之
・本文デザイン/菅田みはる
・図版/さくら工芸社
・編集協力/下村坦・難波美帆

はじめに

もっと面白い、やりがいのある理科を!

地学、生物、化学、物理の4教科がそろったブルーバックス高校理科教科書シリーズは、すべての高校生に読んでもらいたい、学んでもらいたい理科の内容をまとめたものだ。理系だろうと、文系だろうと、だれもが学習してほしい内容を精選してある。
そして、本シリーズ4冊を読破することで、科学リテラシー(=現代社会で生きるために必須の科学的素養)が身につくことを目指している。本シリーズの特長を紹介しよう。

(1)内容の精選と丁寧な説明
高校理科の内容を羅列するのではなく、検定にとらわれずに「これだけは」という内容にしぼった。それらを丁寧に説明し、「読んでわかる」ことにこだわり抜いた。
(2)読んで面白い。「へぇ~、そうなんだ!」「なるほど、そういうことだったのか!」と随所で納得できる展開を心がけた。だから、読んでいて面白い。
(3)飽きさせない工夫クイズ・コラムなどを随所に配置し、最後まで楽しく読み通せる工夫をした。
(4)ハンディでいつでもどこでも読める持ち運びに便利なコンパクトサイズ。電車やバスの中でも気軽に読める。

本書『地学」編は、以上の特長に加え、さらに次の点にも留意した。
地学は地球と宇宙のしくみと成り立ちを考える学問である。対象は、地球そのものだったり、プレートや大陸だったり、太陽系の惑星だったり、輝く星や銀河や宇宙空間だったりする。私たちの日常生活では普段意識しないような大きな対象を具体的にイメージできるよう、身近なものに対比して解説したり、イラストを多数描き起こすなど、表現を工夫した。
一方、地震や火山活動、日々の気象の変化など、日常生活に密接する分野にも紙面を大きく割いた。また、地球温暖化やオゾンホール、資源の問題といった地球環境の諸問題にも迫っており、科学と社会との接点を重視した。「宇宙はもちろん、地球内部や深海にも、まだまだ未知の世界が広がっている。そして今日においても、次々と新発見のニュースが飛び込んでくる。本書にはできるだけ最新の情報を盛り込むようにした。また、主な学説についてはそれを提唱した人物像や社会背景にも触れ、学問の一番ホットな部分を感じられるようにした。
地学というと、原子から宇宙の果てまであらゆる対象を扱うため、博物学的な印象を持つ読者も多いだろう。しかし近年の科学の進歩に加え、各分野が垣根を越えて融合を進めたことにより、現在では系統的な地球科学・宇宙科学と呼べる学問に昇華している。本書ではこの系統性を重視して展開した。地学をこれから学ぼうとする人だけでなく、過去に学習した人にも新たな発見や驚きを体験してもらえると自負している。
本シリーズは、高校生の他に、こんな人たちにも読んで欲しい。

・少しでも科学的な素養を身につけたいと願う社会人
・地学、生物、化学、物理をもう一度きちんと学習したいと考える社会人
・地学・化学・物理を勉強せずに理工学部に入った、生物を勉強せずに医学部に入った等の大学生
・試験の問題は解けるのだが、ものごとの本質がよくわかっていないと感じる大学生

なお、このブルーバックス高校理科教科書シリーズは、ベストセラーとなった中学版『新しい科学の教科書I~III』(文一総合出版)と同様、有志が集い、教科書検定の枠にとらわれずに具体的な教科書づくりをした成果である。

最後に、本書の編集担当の堀越俊一氏には、原稿について忌憚のない意見をいただき、かつ執筆陣を鼓舞して完成に導いていただいた。ここに感謝申し上げる。

2006年2月20日
編者
杵島正洋
松本直記
左巻健男

 

もくじ

はじめに

◆第1章地球の形と構造
1-1古代の人々の考えた地球
1-2地球はほんとうに球なのだろうか
1-3重力からわかること
1-4地球の内部には何がある?
1-5より詳しく地球内部を調べる

◆第2章地球をつくる岩石と鉱物
2-1元素・鉱物・そして岩石
2-2岩石をつくるプロセス:火成岩とマグマ
2-3堆積岩と変成岩:地球に特有の岩石

◆第3章地震・火山・プレートテクトニクス
3-1活動する地球
3-2地震と火山
3-3プレートテクトニクスと地殻変動
3-4マントルの対流

◆第4章変わりゆく地表の姿
4-1地表の景観を決めるもの
4-2過去の地球を読み解く

◆第5章地球と生命の進化
5-1地球の誕生と地球環境の変化
5-2生物の爆発的進化と陸上進出
5-3進化と絶滅、温暖化と寒冷化の歴史

◆第6章大気と水が織りなす気象
6-1私たちをとりまく大気
6-2太陽放射と大気の運動
6-3雲と雨、低気圧と高気圧
6-4日本の天気の移り変わり

◆第7章海洋がもたらす豊かな環境
7-1海のある惑星
7-2海水の振動
7-3海水の流れ
7-4海が抱える豊かな資源
7-5環境を安定なものにする海洋

◆第8章太陽系を構成する天体
8-1太陽系の発見
8-2惑星のすがた
8-3奇跡の星・地球
8-4母なる太陽
8-5第2の地球を探せ

◆第9章恒星と銀河、宇宙の広がり
9-1恒星の世界
9-2恒星の進化
9-3銀河
9-4宇宙の構造

編者・執筆者一覧
参考図書
さくいん

やってみよう
●重力加速度を測定する
●プレートの輪郭を描く

コラム
●コロンブスの航海を生んだプトレマイオスの誤り
●メートル法の制定
●指数の表し方
●宝石となる鉱物の条件
●生命圏を生んだ岩石とマグマ
●水が関与する鉱物
●灰に埋もれた日本列島
●水蒸気爆発
●標高のそろった山脈のできかた
●「太陽系誕生=46億年前」の根拠
●暗い太陽のパラドックス
●バージェス動物群と脊椎動物の祖先一
●大気中の酸素も「化石」?
●大気のない月面の温度環境
●オゾンホール
●春一番
●湿舌と雷
●台風の風と雨
●人体にある海の名残
●離岸流(リップカレント)に注意せよ
●エル・ニーニョ
●海水から金は取り出せないか
●夢のエネルギー資源〜メタンハイドレート~・
●海底熱水噴出孔周辺の特異な生態系
●ハレー彗星
●惑星っていったい何だ?
●エウロパに海が存在する?
●報道は正しいとは限らない
●スペクトル型と吸収線
●かに星雲のパルサー
●ニュートリノ天文学
●統合された謎の天体たち
●もっと広く、もっと奥へ
●アインシュタインと「望遠鏡になった男』

 

はじめて学ぶ大学教養地学

大学生向け地学テキスト

地学の内容を一通り網羅した構成になっています。最近の天文・宇宙を含めた地学分野でどんなことがわかっていて、話題になっていることがつかめるようになっています。大学受験で地学が必要な方、そうでない方にもおすすめの一冊です。

 

 

はじめに

本書は、大学の教養課程で初めて地学を学ぶ学生を想定して書かれた。地学とは、地球や宇宙の成り立ちを知り、そこで起こる現象を考える学問である。 地球は、約 46 億年前に太陽系で誕生し、固体地球、大気や海洋、そして生物が 相互に作用しながら、これまで変化し続けてきた。

近年、気候変動、食料、環境、資源の問題など、地球と文明社会の持続可能 性が大きく取り沙汰されている。地球と人間の関係に変化が生じてきていることは明らかである。これらの社会問題を考えるために、基礎的な科学的事実を 知ることは、文系、理系を問わず、現代人に必須の教養である。

また、日本では、地震や火山の被害だけでなく、大雨、洪水、台風、大雪、高波などの気象災害も頻発する。これらの原因となる現象の本質を正しく知ることは、防災への第一歩となる。一方で、私たちは、風光明媚な景勝地に囲まれて、豊かな自然の中で、四季を感じながら過ごしている。

このように地学は、身の回りの現象から災害と防災、地球環境や持続可能性の問題まで、とても幅広く重要な学問である。しかし残念なことに、現在の高校ではほぼ、一部の文系受験生のための科目として設置される以外、生徒が地学という科目に触れる機会がほとんどなく、大学教養科目としての地学の教科書も非常に少ない。本書はこのような背景を踏まえ、初めて地学を系統立てて学ぶ大学生や一般の方を想定した構成と内容になっている。

3人の執筆者のそれぞれの専門分野の視点から、固体地球、大気と海洋、 文の3部で構成した。現象が生じる原理になるべく踏み込み、現象の理解を日 的としたため、扱う内容は取捨選択されており、高校地学の内容をすべてカバーするものではない。読者に高校地学を学んだ経験は問わないが、既習者であっても、現象の仕組みの踏み込んだ説明をぜひとも学んでもらいたい。

なお、各章末などに問いを設けている。これらの問いには、すぐに答えが得られないものもあるかもしれない。これからの社会を生きるうえで、よく考えて行動して欲しいという、著者らの願いが込められている。

最後に本書を執筆するにあたって、たくさんの方々の協力を得た。第2部では慶應義塾大学の宮本佳明さん、阿部未来さん、兵庫県立大学の島伸一郎さん、 第3部では大阪工業大学の真貝寿明さんに有益なコメントをいただいた。ここに謝意を表したい。

2020年3月
杉本 憲彦
杵島正洋
松本直記

 

 

目次

はじめに

第1部 活動する地球の姿
1. 地球の概観と内部構造
1-1. 地球の認識
1-2. 地球の大きさの計測
1-3. 地球の精密な形
1-4. ジオイドと GPS測量
1-5. 地球の内部構造を探る
1-6. 地殻とマントル
1-7. 地殻の厚さの分布
1-8. アセノスフェアとリソスフェア
1-9. 地磁気
コラム 残留磁気と松山基範

2.プレートテクトニクス
2-1. プレート理論の誕生
2-2. プレート境界
2-3. プレート運動の原動力とプルームテクトニクス

3. 地震と地震災害
3-1. 地震という現象
3-2. 地震発生のしくみ
3-3. 地震学の勃興と発展(昭和南海地震まで)
3-4. 空白域とアスペリティ (2011年まで)
3-5. 東日本大震災と南海トラフ巨大地震(2011 年以降)
3-6. 地震災害と防災
コラム 稲むらの火と津波てんでんこ

4. 岩石と鉱物
4-1. 岩石をつくる鉱物の特徴と分類
4-2. ケイ酸塩鉱物
4-3. 固溶体
4-4. 火成岩の分類
4-5. 堆積岩と変成岩

5. マグマと火山
5-1. 火山の噴火と火山の姿
5-2. 火山の分布とマグマの成因
5-3. 沈み込み帯におけるマグマの成因
5-4. マグマの多様化
5-5. 花こう岩の謎

6. 地形と地層の成り立ち
6-1. 地球内部エネルギーがもたらす地表の景観
6-2. 太陽エネルギーがもたらす地表の景観
6-3. 二つのエネルギーの相互作用による地形
6-4. 海面の上下変動と氷期・間氷期
6-5.堆積物と地層
6-6. 地質時代区分
6-7. 放射年代測定法
コラム 氷床コアが保存する過去の気温変動

7. 地球と生命の歴史
7-1. 地球の誕生(46億~40億年前:冥王代)
7-2. 生命の誕生(40億~35億年前:太古代前期)
7-3. 光合成生物の登場と地球環境の激変(35 億~25 億年前:太古代)
7-4. 動物・植物の登場と繁栄(25億~7.3 億年前:原生代)
7-5. 全球凍結事変(7.3億~6.3 億年前:原生代)
7-6. 生物の爆発的な繁栄(6.3 億~4.4 億年前:原生代末〜古生代前期)
7-7. 生物の陸上進出と大量絶滅事変(4.4億~2.5億年前:古生代中期~後期)
7-8. 恐竜など爬虫類の繁栄(2.5 億~6600万年前:中生代)
7-9. 白亜紀末の大量絶滅事変(6600万年前:中生代末)
7-10. 寒冷化する地球と人類(6600万年前~現在:新生代)

8. 人間社会と地球の関わり
8-1. 地下資源の分類
8-2. 鉱床の形成
8-3. レアメタルの特性
8-4. リサイクルと都市鉱山
8-5. エネルギー資源の形成
8-6. 地球上で人間が暮らすということ

第2部 地球をめぐる大気と海洋
1.大気の構造
1-1. 気体の性質
1-2. 大気の組成
1-3. 気圧と層構造
コラム オーロラの発生のしくみ

2. 雲と降水
2-1. 安定、不安定、中立の概念
2-2. 潜熱と湿潤断熱減率
2-3. 雲の形成
2-4. 降水のしくみ

3. 地球の熱収支
3-1. 熱放射
3-2. 短波放射
3-3. 赤外放射
3-4. 温室効果
コラム 惑星などの放射平衡温度

4. 大気の運動
4-1. ニュートン力学
4-2. 風の成因
4-3. コリオリカ
4-4. 風の力のバランス
4-5. ハドレー循環と偏西風
4-6. 傾圧不安定とフェレル循環

5.海洋の構造
5-1. 海水の組成
5-2. 海洋の層構造
5-3. 海水の振動

6.海洋の大循環
6-1. 風成循環
6-2. エクマン輸送
6-3. 西岸強化
6-4,深層循環
コラム ホッケ柱

7. 大気と海洋の相互作用
7-1. 世界の気候と日本
7-2. 日本の四季
7-3. エルニーニョと北極振動
7-4. 物質循環

8. 大気・海洋と人間
8-1. 天気予報
8-2. 気象災害
8-3. 気候変動と地球温暖化
8-4. 環境問題
8-5. 持続可能性

第3部 地球を取り巻く天体と宇宙
1. 天体の運動と暦
1-1. 地球の運動と1日
1-2. 均時差
1-3. 天体の位置の表し方(赤道座標)
1-4. 年周運動と暦
1-5.月とひと月
1-6. 天体の運動と時間単位
1-7. 地球自転の証明
1-8. 地球公転の証明
コラム 年周視差をめぐるタイムレース

2. 惑星の運動と宇宙観の変遷
2-1. 惑星の運動
2-2. 惑星現象
2-3. 宇宙観の変遷とケプラーの法則
2-4. ケプラーの法則
2-5. 調和の法則から惑星の軌道半径を知る
2-6. 1天文単位の決定
2-7. 地球を1円玉の大きさに縮小すると
2-8. 調和の法則の証明

3. 太陽系の姿と惑星探査
3-1. 太陽系の形成
3-2. 太陽系の天体
3-3. 太陽系生命圏
3-4. 系外惑星
コラム 太陽系外からの来訪者

4. 恒星としての太陽
4-1. 核融合反応
4-2. 太陽の構造
4-3. 太陽活動と地球
コラム 地上の星核融合炉

5. 恒星
5-1. 恒星までの距離
5-2. 恒星の明るさ
5-3. 恒星のスペクトル
5-4. フラウンホーファー線と恒星のスペクトル型
5-5. HR図
5-6. 恒星の進化
コラム ベルのパルサー発見

6. 宇宙の距離はしご
6-1. ケプラーの第3法則の利用
6-2. 年周視差の利用
6-3. HR 図の利用
6-4. セファイド
6-5 ハッブル・ルメートルの法則
6-6. Ia型超新星
コラム 聴覚障がい者が活躍したセファイド研究

7. 最新探査が描く宇宙の姿
7-1. 銀河の姿
7-2. 銀河系の周辺
7-3. 宇宙の大規模構造
7-4. 見ることのできる宇宙の果て
7-5. WMAP 衛星の活躍
7-6. 私たちは星の子
コラム 重力波とブラックホール、そしてマルチメッセンジャー天文学

索引

 





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