人にお願い事を頼めるようになるためのステップ

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前回は、頼み事をするときの気まずさや苦手さはどこからくるかという事について言及しました(なぜ他者に頼みごとをするのが気まずく、億劫になるのか?)。

では、どのように頼みたい事があるのに頼みづらいという状況を改善できるのでしょうか。

ハイディ・グラント (著), 児島修 (翻訳)
出版社 : 徳間書店、出典:出版社HP

 

必要な助けを得るための準備も必要?

まず、相手の立場になって考えてみましょう。例えばオフィスで重いものを運んでいる人がいる場合、重そうと判断できれば声をかけたりするでしょう。ただ内心は重いものを持っていても、つらい表情がなければ相手には伝わらず、本当は頼み事がある、助けが欲しいとは解釈しないでしょう。

誰に助けを求めていて、いないのかを、区別できるかというのは極めて難しいです。ある状況について曖昧なことしかわからないとき、人は自分のことに意識を向けようとするのです。逆に言えば、あなた自身が助けや支援を必要としているとき、自分が思っているよりもはるかに周りにはそれが伝わっていないということです。

そこでの誰かに助けてもらうために必要なステップは四つあります。一つずつ見ていきましょう。

ステップ1: 相手に気づかせる

人は周りで起きていることすべてには注意を向けていない。

人は基本的に、自分のことで頭がいっぱいで、周りにはあまり注意を払っていません。その理由は、周りに膨大な情報があるため、自分の目的に関わるものだけに焦点を絞らなければならないからです。

助けを求めるサインが気づかれにくい原因は、相手の忙しく騒がしい環境だけではありません。それは、助けるべき側にある場合もあります。たとえば、不安や憂うつ、欲求不満といったネガティブな気分の人は、周りに注意を向けたり、他人の欲求に気づいたりするのが難しくなります。ですので自分のコントールの外にあることも覚えておきましょう。

ステップ2: 助けを求めていると相手に確信させる

人は他人の心を読めません。むしろ、変に理解してしまっているのではないかというような恐れを抱いています。助けを求めていることが他人に気づかれにくい理由には、人前で恥をかきたくないという心理も関係しています。

大きく二つありますが一つは、目の前の状況を誤解しているかもしれない、間違えたら大恥をかいてしまうかもしれないという不安です。もう一つは、私たちが体験的に知っている、求められてもいないのに助けようとすると、相手は気分を害する、という知識です。

相手が困っていないのに、助けが必要だと誤解してしまう、ことのリスクと求められていないのに助けようとして嫌がられることへの不安は、どちらも誰かを助けようとする側にとって大きな障壁になります。逆に言えば、この二つの壁を取り除くことが最善策になります。それはシンプルに直接、相手に助けを求めるということになります。

とはいえ、助けを求めることに抵抗を覚える人もいるはずです。もし、こちらから何も言わなくても、助けてほしいという気持ちを相手が察知してくれるのであれば、それを望むでしょう。でも、残念ながら現実にはそうはいきません。他人は助けを求める人は、それを伝えてくるはずだ、と考えているからです。ですから、実際に助けを求めること以外に、確実に相手にそれを伝える方法はありません。

ステップ3: 助ける側は責任を負わなければならない

他にもたくさん人がいるのに、なぜ自分が助けなければならないという事を認識させる事が必要です。

局面で人が困っている誰かを助けようとしないのは、無関心や冷酷さのためではなく、助けられる立場の人が多すぎるので、自分が助けなくても大丈夫だろうと思うことがあります。

誰もいない田舎道を車で走っているとき、路肩にハザードランプを点滅させた車が停まっていて、その近くに年配の女性が困り果てた様子で立ち尽くしているとします。あなたは車を止めて彼女を助けるでしょうか?おそらく、そうするはずです。これから何時間も他の車が通らないかもしれないので、自分以外に彼女を助ける人はいないと判断するはずだからです。

つまり、周りに困っている誰かを助けられる人が多くなるほど、それぞれが抱く自分が助けるべきだ、という責任感は薄れます。誰かのサポートが必要なときは、責任の分散がもたらす混乱を減らすために、相手にあなたを助けることへの明確な責任感を持たせるような頼み方をすべきです。手を貸してほしい相手がいるのなら、時間をかけ、その人に向けて「あなたに助けてもらいたい」という思いをしたためた丁寧なメールを書きましょう。大勢に向けて一斉に 依頼をしても、無視されやすくなります。

ステップ4: 助ける人が、必要な助けを提供できる状態でなければならない

相手にとって、自分のすべきことの妨げになる可能性がある。
私たち現代人は、誰もが忙しい毎日を過ごしています。スケジュール表は予定で埋まっていて、「やることリスト」は一マイルもありそうなくらい長くなっています。

誰もが自分の仕事を抱えて、目の前の問題を解決することで頭をいっぱいにしています。このように忙しい人からの助けを得るには、次の三つのことをするのがポイントです。一番目は、「何を求めているのか、どの程度の助けが必要なのかを、はっきりと、詳しく説明すること」です。「お願いしたいことがある」「ちょっと手を貸してほしい」といった曖昧な伝え方をすると、相手は自分の手に負えないほどの手間や時間がかかることを頼まれるのかもしれないと不安になります。

二番目は、「妥当な量の助けを求める」です。相手のすべきことの妨げにならないような内容のものを頼むようにします。三番目は、「求めていたものとは違っていても、相手の助けを受け入れる」です。思ったほど助けてもらえなくても、それについて不満を抱かないようにしましょう。相手が与えてくれた助けがわずかであっても、感謝して、相手との関係を良いものにすることに目を向けましょう。そうすることで、私たちが考えている以上の恩恵が得られます。

 

ハイディ・グラント (著), 児島修 (翻訳)
出版社 : 徳間書店、出典:出版社HP